第18話 そうです。私が陛下です。

 プロアイスがナイフをしまう。どうやらこの男、同胞には優しいようだ。

 「そういうことだったんだが……」

 「私たちは技術統制を取ると死ぬと信じ込まされている。どうやら取っても大丈夫のようだ。私が生きているということは。」

 その言葉を聞いて、プロアイスは自分が倒したシュッリルムスライトのヘルメットを取る。気を失ってはいるものの、中身はみんなと同じだ。

 

 ハベヂラは気まずそうだ。彼女たちを助けてもどうせ敵なのだ。

 「フン。俺は、何も見ていないし聞いてもいない。お前らの好きにしろ。次にあったら命はないぞ」 

 彼はそう言って部隊を引き連れて去っていった。彼なりの配慮を私はありがたく受け取った。彼の声がエコーし、薄暗い闇へと消えていく。


 その間にプロアイスがもう一体のヘルメットを外す。

 「私たちも仲間に」

 開放されたシュッリルムスライトが決意の表情のもと私たちに加わった。

 私たちは細い道を歩き、光のある方へと歩んでいく。迷宮のような道を情報と勘を頼りに進んでいった。そこには……


◆◆◆

 「ここまで来たか。ご苦労なこった……」


 ぼさぼさの銀の髪にふわふわのファーのついたマント。こいつ、いやこの方は……

 「そうです。私がジヒラート8世です。」

 馬鹿な!?思考盗聴か!?

 

 「ジヴェジルス!!」

 プロアイスが感情をあらわにする。また、AI老人が青白いホログラムで飛び出て来て話しかける。

 「少年!本当に生きておったか!しかし、お前までそのヘンテコな眼鏡をしおって!!しかし、お前が生きていたとなれば……」

 そう、管理主義革命の象徴たるシンテーア皇帝が健在とあらば、ジエール帝国連邦再統合の道しるべとなり、人民の希望となる。

 

 「しかし惑星エルナーゲリテーンの抵抗勢力を率いてアインスネルクを解放するとはさすがじゃ!!」

 老人と話せるなら、彼もさぞ感激することだろう。しかし、ヘンテコ眼鏡をかけた彼は表情一つ変えず、平坦なトーンで話す。

 「ジエールは技術統制のもと再統合される……」


 「何を言っておるのじゃ!!管理主義とはITを使ったリソースマネジメントで人間を自由にする思想。人間が統合システムに組み込まれては自由とは言えんのじゃ!!」

 やはり生粋の管理主義思想家の議論。私が入る余地がない。


 「ではその結果どうなった!?帝国連邦は拝金主義に敗れ、人民は統合を失った!!人間とてヒューマンリソース。リソースマネジメントにより操作されるべき存在……プロアイスガヴァムナ、お前は人民は歯車といったではないか。」

 「違うんだが!俺は、俺は……(やべぇ、反論できねぇ)!!」


 陛下が自ら前に出て、腰からカード型デバイスを取り出す。彼もカード使いか!!

 「もうよい、おれさまが直々に片付ける!」

 すると、横からシュッリルムスライトの軍勢が彼を守るように駆けつける。

 「いえ、ここは私が」

 「あっ、お願いします」


 陛下が後ろに下がると、玉座を模した岩の椅子に腰かける。横には、髪が短くなったため気づかなかったが、ヴェルム様?ヘンテコ眼鏡をしていないようだが……味方か?

 私の思考を遮るかのように、戦闘のシュッリルムスライトが声を発する。

 「私はS:-1129-09654027ZC、お前がここまで来るとは。やりますねジェニムロット。」


 「ゼヌオント隊長!?」

 彼女は以前の私の上官。戦死したと聞かされていたが、やはり情報がうやむやにされているようだ。

 「目を覚ましてください!」

 これが応えと言わんばかりに、私にレーザー銃が向けられる。ヘンテコ眼鏡越しに、隊長の冷たい目を感じることができる。私はヘルム越しに彼女の眼を見ながら、体を捻りそれを躱した。

 

 「クッ……」

 

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