第15話 企業連合軍!?プロアイス、おめー何か国語話せんだ?
「なんで逃げたんだ?」
同志プロアイスの小声に呼応して、小声で話す。
「あのゴーグルにモニター機能があったらどうする!?」
なるほど例のグラス、マルチデバイスの可能性もある。そういうことなら逃げるのが賢明な判断だったのかもしれない。ところで、森の奥へと入ってきたはずが、何やら焦げ臭いような。
「あれを見るんだが?」
彼が指差す先には3人の企業連合軍の兵士。川のそばで地面に座り込み、野営をしているようだ。しかし、なぜこんなところに企業連合軍が?回り込んでやり過ごすか?いやここは……
「奴らから情報を……」
彼も私と同じ意見のようだ。だがこちらは人数不利。反対側は川だし、奇襲は難しい。正面から行くしかないようだ。考えているうちに、飛び出していくプロアイス。
「
サーヴァリア語も話せるのか!?さすがにスゲー!!
と、三人の兵士がすさまじい反射速度で私たちに銃を向ける。ダメじゃん!?!?
「
三人の兵士が拳銃を構え、包囲しようと近づいてくる。ゼ、絶対絶命だ!!
……。
「
ここでプロアイスが両手を左に向け、珍妙なポーズをとる。実に怪しい。しかし三人の兵士は怪しみながら、ただそれを見つめる。
すると彼は右手で半円を描き、両腕を平行に伸ばす。
次の瞬間……
「
彼は両手を大きく横に振り回して、遠心力で一回転する。瞬きする間のスピードだ。同志プロアイスは一瞬で戦闘スーツへ変身しており、三人の兵士に突撃をかける。
「
慌てて兵士が銃を撃つも、プロアイスは飛び込み、螺旋を描くように回転する。レーザー銃が回転するプロアイスの体をすり抜けていく。まるでスローモーションのように、ゆっくりと、ゆっくりとすり抜け……次の瞬間、スローモーションが解ける!!
あっ、ぶっ!
私の腰を
同志プロアイスは回転を終え地面に両足で着地すると、すでにナイフを三本、敵に目掛け投げつけていた。
「効率的管理主義ナイフ!!」
ナイフが再びスローモーションで兵士に向かい飛んでいく。
キーーーーーーーーン……
そしてスローモーションが解除される。兵士はよけられない!!
「グわッ……!!!!」
バタリと3回の音がすると、「降参する」と兵士が武器を手放し仰向けになりながら両手を広げた。
「私の出番は!?!?」
◆◆◆
私は老人AIを起動する。
「同時通訳モードを起動」
「やっとわしの出番か。ま、わかったのじゃ!!」
私は兵士たちに銃を向け、尋問を始める。
「さあ、知っていることを話してもらおう。正直に話せば命だけは助けてやる。」
兵士は恐怖で足を震わせているようだ。
「知っていることって??お前ら技術統制か!?」
ピュンピュン。光線銃が地面に向けて撃たれる。話している兵士の頭のすぐ左横だ。
「俺たちが質問してるんだが?」
「……」
「お、俺たちは脱走兵で……、惑星ヒェルニエに家族が住んでる。知っていることは何でも話す。命だけは助けてくれ!!」
この一人は命乞いを始めたが、後の二人はすでに諦めた表情をしている。
「この惑星で何が起こっている?」
「……。アインスネルクが占領されたと思ったら『技術統制』を名乗る奴らが出てきて、恐ろしく強いんだ。洞窟内への毒ガス投入を行ったが駄目だった。明日サーヴァリア軍で大量突撃を仕掛けるらしい。俺たちは命が惜しくて逃げてきたんだ。勝てるわけない。頼む!!明日味方の輸送船を乗っ取ってヒェルニエに帰る予定なんだ。」
プロアイスが再び銃を構える。兵士は「なぜ!?」の表情。絶望と驚きの混ざった顔だ。
「待て、命は助けると言った!!」
「俺は言ってないんだが?」
冷酷な男だ。これほどまでに冷酷だったとは。いや、冷酷でなけれは主席は務まらなかったのか。
「最後に言い残すことは?」
兵士は絶望した表情でこう答えた。
「最悪な人生だった。結婚してからというものの、激化する競争社会のせいで子供たちにも満足に食べさせてあげられず……。働けど、働けど給料は増えず、軍人になれば少しは良くなるかと思ったが、このざまだ……。いっそ死んだ方が楽なのかもしれない。サーヴァリアに生まれたのがすべての間違いだったのか。」
すると、今まで黙っていた兵士が口を開く。
「結婚できただけましだ。俺なんて金がなくてまともに恋愛もできんかった。」
「俺もだ。ハハハ……ハハハハハ!!!!」
男は大笑いする。
哀れだ。プロアイスが引き金に手をかける。
「待て!!」
私は無意識でそう叫んでいた。皆が私を見る。
「明日脱出すると言ったな。」
「そうだ……その予定だった。」
「ヒェルニエにこしてきたのか?」
「家族でな。新しい国ができるってんで、チャンスもあるかと思ってな。」
私はマルチデバイスから名刺を一枚取り出し、差し出す。
「天嶺連邦亡命相談センターだ。盗聴されない。電話して、家族で亡命しろ。そこのお前たちもだ。」
プロアイスの鋭い目つきが私を刺す。
「甘すぎるんだが?所詮拝金主義者、器用な口に騙されれば、裏切られることになるぞ。」
私は息を吸い込むと、少しずつ吐き出した。
「人が私を裏切ろうと、私は人を裏切らない……」
あっ、ちょっといいこと言っちゃったかも……。
「私たちは人種差別をしない。新しい人生を送れ。明日はうまくいくといいな。」
兵士たちは完全に力が抜けていた。しかし、目に輝きを取り戻し、立ち上がって力を込めて名刺を受け取った。
「ありがとう……」
これこれ、気持ちいいんだよね~~。
「フン。」
同志プロアイスは気に入らなそうな表情で、デバイスからアイスバーを取り出し、ぺろぺろとなめ始めた。
「甘すぎるんだが……。」
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