第12話 謁見!アマト陛下!!

 私は惑星ハイリン、ミョウトの地を踏みしめる。ジエールとは異なる碧の国だ。都市と森が融合し、生活に自然があふれている。

 私は異世界に迷い込んだようだった。なんということだ。立ち並ぶ高層ビルには蔦が這い、鳥がさえずり、高層マンションのバルコニーはまるで庭のように樹木が生い茂っている。虫よけシールドがあるので虫も刺してこない。素晴らしい都市だ。


 「久々に来たな~。ミョウト。最初に俺が来てから、だいぶ変わったな~~。」

 そう、同志プロアイスは初めに天嶺皇国の地を踏んだジエール人、いや当時はシンテーア人としてか。彼は調査隊として天嶺皇国の地を踏み、言語習得や文化調査などを行った。と、歴史の教科書に書いてあった。


 「確かに、あなたが最初に到着したころはこんな高層建築はなかったでしょうね。」

 「いや、虫が。」

 「あはい。」


 我々はこれから同志ウーナ・ヴェーデインに会いに行く。同志ウーナは現在首都ミョウトで天嶺連邦の首相をやっている。

 しばらく歩くと大きな鳥居が現れる。プロアイス曰くこの先に皇居と執務室があるという。また、ウーナとはこの先の首相官邸で会う約束をしているとのことだ。


 鳥居に一礼し、都市の緑にぽっかりと空いた穴をくぐる。その先は少し薄暗かったが、木漏れ日がさしていた。澄んだ川が流れ、せせらぎの音と鳥のさえずりが音楽のように耳に入ってくる。様々な色の紫陽花が咲き乱れ、歓迎するかのようだ。私は人工強化兵シュッリルムスライトとして生まれたが、これがこのように心地よく感じられ、自分にも心があるのだとより実感する。

 私は無意識に声が漏れたようだ。

 「いい、ところですね。」

 「そうだ。ジエールとは違った管理主義がここにはある。俺に天嶺を語らせると長いことになるんだが?」

 「しばらく歩きそうですし、お聞かせ願えれば。」


 私はこの言葉を放ったことを後悔した。この雰囲気に酔いしれられる素敵な話を聞かせてもらえると思ったのだが、この男は30分間いつ息継ぎをしているのかもわからないスピードでしゃべり続けた。しかも話は全部天嶺語の文法について。興味がない。天嶺語といえばテストで赤点スレスレだった。それから趣味は旅行とトレカだ。こうして貴重な自然鑑賞が台無しになってしまったのだ。

 中間地点についたのだろうか、東屋につくとそこにはよく見慣れた人影が。高い背にふくよかな体格、ローポニーテール。肖像画でしか見たことがなかったが、彼女がウーナ・ヴェーデイン・フォスドーレウ。帝連の母というわけか。


 「ヴェーデイン!久しぶりなんだが!!」

 「ガヴァマオナ。本当に会えてよかった。二度と会えなくなるところだったんだろう?」


 管理主義の「党派」というものは、少し特殊で、政敵と言うよりかは支え合うライバルのような関係だ。秩序連盟、統一管理機構と党派の違う彼らだがまるで親友のようだ。

 「こちらはジェニム・ロット。ヒェルニエのレジスタンスでヒーローとして人民から愛されているんだが?」

 「初めまして、私はウーナ・ヴェーデイン。君の活躍はここからでもよく聞いていたよ。こうしてあえてうれしい。」


 彼女は少し照れくさそうに手を差し出した。私は緊張で手汗をかいていたので、少しぬぐってから、両手で握手を交わした。

 「毎日肖像画を見ていましたから、初めましてという感じはしませんが。初めまして、ジェニム・ロットです。こちらこそお会いできて光栄です。」


 すると、AIも勝手に起動する。

 「ヴェーデイン!!久しぶりじゃのう!!」

 「爺さん!!これはいったい!?」

 話すと長いので、歩きながらいろいろと説明する。


 「そうそう、今日はアマト陛下とも会ってもらう。」

 歩きながら、ウーナがさっとほかのことに混ぜ込むかのようにとんでもなく重要なことを口にする。

 

 「い゛ッ……」

 私は反射でとてつもない声を上げてしまった。アマト陛下と言えば、天嶺皇国の皇帝ケニアズであり、つまり我らの本国天嶺連邦の君主であるお方。

 「え、私一兵卒シュッリルムスライトですし、化粧も最低限しかしてないし……ああ、ウィッグとかも持ってきてないしどうしよ。」


 「なあに大丈夫だ。会えばその理由もわかる。」

 プロアイスもそれを聞いて何やら嬉しそうだ。

 「アマトっち!!久しぶりなんだが!?」

 一体どういうお方なんだ……


 また一つ大きな鳥居をくぐると、そこはまるでおとぎ話の中の城のようだった。"碧"の建築様式、蔦が這い、湖には何やら魚も泳いでいる。ゆっくり鑑賞している時間もなく、案内される。

 門をくぐると、そこには陛下が待っていた。こちらも肖像画でよく見た顔だ。


 「待っていたぞ。おお、プロアイス。久しいな!!」

 「アマトっち!!」

 彼らはガシッとシンテーア式握手を交わす。相手の手首をつかむやつだ。

 すると陛下は次に私を見る。狐のような鋭い目つき。きれいに整い、てかてかと光っているぱっつんの黒髪。"碧"の建築様式を背にしてまるで本の中にいるかのような、幻想的な雰囲気に包まれる。彼の背後からは後光がさしているかのようだ。


 私は少し硬直したが、その神々しさに耐え切れず思わず跪いた。

 「ケニアズ陛下。臣下が参見いたします!!」

 

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