技術統制潜入編

第11話 本国からの任務

 「永帝陛下が生きていた!!」


 管理主義の話など、禁句にはなっていたが町で旧人民が湧いていた。管理主義関連の情報がシャットアウトされたこの国で、いったいどこからこの方な話が伝わっているのか。


 その話を聞いて、老人AIもニッコリして上機嫌だ。永帝陛下というのは、旧ジエールが君主としていた人物であり、悠久の歴史を持つシンテーア皇帝ケニアズである。特筆すべきは、皇帝の身分でありながら世界初の管理主義革命を承認し、それを支持したことだ。管理主義国家の確立に関わったという彼の功績が認められ、彼は管理主義三銃士の一人に数えられている。

 サーヴァリア企業連合は彼が惑星エルナー・ゲリテーン軌道上で死亡したと発表していたようだが、同惑星に不時着しレジスタンス活動を支援していたらしい。アインス・ネルクを解放したことで正式に生存を公表したようだ。


 その話を聞いてから間もなく、私は無線を受け取った。

 

『チャーラーラー・ラララララララ・チャッチャラーチャーチャッチャチャー♪♪』(私のキャラソン。聞きたい人はこちらから聞いてくれ。→https://soundcloud.com/user-20273945/s1048-0060-8742rr)※無線なのに着信音があるのは仕様。


★★★

 ※暗号は解読機を通しています。

「おう。こちらヒェルニエ管理主義同盟本部。イレーナだ。どぞー。」

 彼女はイレーナ・ルーノイ。惑星ヒェルニエのレジスタンス活動のリーダーだ。


「こちらジェニム・ロットどぞー。」

「天嶺連邦本国から指名がかかった。今すぐ本部へ来い。どぞー。」

「どういうことですか。どぞー。」

「秘密裏に惑星ハイリンに渡航できるよう、手筈を整えておく。すべこべ言わずに指示に従わんかい。どぞー。」

「あっはい。」

★★★


 そんなこんなで、私は本部に向かうこととなった。本部は巨大な地下組織となっていて、幹部クラスの人間でなければ深部へ向かうことができない。

 狭苦しくて、迷路みたいな地下壕を幾度なく潜り抜け、私は本部に到着した。


 「同志イレーナ。お久しぶりです。」

 「おう。よう来たな。まあ茶でも飲めや。」


 そういわれて、出されたのはミュラーテン・サイダーだった。なるほど、慣用句というわけか。透明なコップに透明な液体。ジエール人のソウル飲料だが、ここでは最高級品だ。コップには氷がいくつか入っている。

 冷たいサイダーの甘味が体を刺すかの如く、喉を刺激する。この少し、くどいくらい甘いのがミュラーテン・サイダーだ。懐かしい甘味に私は感激し涙を流しそうになった。


 「では本題だ。本国の同志ウーナが天嶺皇国に吸収を願い出て、天嶺連邦が成立したっちゅうわけだ。我らが我らの育てた国に吸収される。皮肉だねぇ。そして、『最重要任務』にお前を指名しとる。」

 相変わらず威圧的な言葉遣いだ。しかし、『最重要任務』とは。喉についた甘味が徐々に薄れていく。


 「それで、内容は?」

 「最高機密事項というこっちゃ。レジスタンスの俺にも教えられんそうだ。まあそこまでやばい任務ってこた相当やばいやっちゃろう。プロアイスもお前と共に向かわせる。」


 プロアイスと言えば管理主義同盟の事実上No.2だ。ジエールの元主席であり、サーヴァリアに戦犯として死刑にされるところだったが、彼女に間一髪のところで救出されたようだ。そんな人を連れて行っていいのだろうか。


 「え?同志プロアイスを?」

 「俺は問題ないんだが?」

 

 ヌッ。部屋の角が影になっていて、見えなかったが、よく見ると腕を組みながら男が壁にもたれかかっていた。非常にびっくりした。


 「そういうことだ。こっちのことは俺たちに任せて暴れてこい。」


 何というおんな気。こういう人こそリーダーにふさわしい。彼女曰く、密輸用の潜宙艦が来ているから、それに乗って本国へ迎えとのことだ。同志プロアイスも一緒だ。隣に偉人がいると緊張するが、この人がいたほうが本国の人とも話しやすい。

 私はお土産にサイダーをもう3本持たせてくれるようお願いしたが、めちゃめちゃ怒られた。そして、潜宙艦に登場し天嶺連邦の首都ミョウトへ向かうのだった……。

 

 

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