第10話 自由の戦士ヴォドルフォス!!
「ハッ!!!!」
一本の剣が私に絡みつくワームの触手を切り裂いた。
ドサドサドサ。一本二本三本と触手が地面に落ちていく。私は支えるものを失い、地面に落下した。高くあげられていたせいか、鈍い痛みを全身で感じている。
「誰だお前は!?」
カードハンターが驚きの声を上げる。
少しぼやけた視界に映っているのは……青い戦闘スーツ?それになんだか、明るい長調の行進曲が聞こえるような気がする。
青の戦闘スーツは行進曲に合わせて、両手を右へ左へと動かしながら、大声を上げ始めた。
「世界の自由を守るため、あ市民の権利を守るため。立ち上がったは正義の男。あ自由・解放・正義の守護者、あブロエノン・ヴォドルフォス~~~~~!!」
え、何?え誰?渋ッ……ッ。私は突っ込みを入れようと、声を出そうとしたが腰の痛みに悶える。
「あだッ」
「助けに来たぞ盟友」
盟友って……、痛みをこらえて突っ込む。
「えブロエノン氏って……ヴァルエルク共和国の外交官でしょ……?」
「私は惑星ヒェルニエの解放を支援するためヴァルエルク共和国から派遣された正義の戦士だ。君のことは聞いているぞジェニム・ロット!!」
「ヴァルエルク共和国は今、我々の支援者
老人AIが国際情勢の説明をしてくれたので、まあヴァルエルクの活動家も我々の仲間であることが分かった。それを聞いてカード・ハンターもようやく状況を理解する。しばらくぼーっとしていた様子だが、ふと我に返り、怒り出す。
「な~~~にが自由の戦士だ!!自由の戦士なら、私たちのようなフリーランスも認めてちょうだいよ!!」
「価格のつり上げは、善良な市民の自由を阻害する!」
おや、少しは話が分かるやつのようだ。自動回復が効いてきたのか、立ち上がることができる。すると、彼は「任せよ」と言わんばかりに私の眼を見て頷いた。
「奴はいまエネルギー切れだ。」
「合点承知!!」
ブロエノンは剣を高く振り上げる。すると剣がガシンガシンと機械音を出してより巨大な剣に変形した。
「受けよ正義の鉄槌!!」
(剣じゃん。)
「フリーダム・デストロイヤーーーー!!」
(なんかだせぇーー!!し、しかもワンチャンフリーダムが破壊されている可能性もあるぅーーー!!)
ブロエノンは重力のままに剣を縦に振り下ろす。カードハンターは必死に後ろへ逃げようとするが、剣の直径がありすぎて、ぶち当たってしまう。
「側面によければよかったーーーーーーーー!!!!」
ドカーーーーーーン!!!!
モンスターじゃなかったけど、拝金主義者だからやっぱり爆発するのか……
★★★
「というわけだ。」
ブロエノンが手を伸ばす。私はそれを握って、起き上がった。我々の祖国ジエール帝国連邦は今や属国とばかり思っていた天嶺皇国に吸収され、長年の宿敵であったヴァルエルク共和国が仲間か。まったく狂った世界だ。
「ありがとう」
「例には及ばない。私はこの惑星の市民たちが、私の戦いを見て『自由主義』に目覚めてくれればと思って戦っているのだ。」
なるほど、助けてはくれるが、最終的には我々管理主義の敵というわけか。面白い。
しかし、やつもまた闇取引集団「テン・ヴァイヤー」のうちの一人。私たちはこれからも奴らと戦わなけばならない。
「お、終わった~~~。よかったねぇ、ジェニム・ロット」
あきれたやつだ。戦士だというのに最後まで隠れているとは。私の呆れに感付いたのか、彼女が反論する。
「だって、虫苦手なんだもん。」
「いや虫とかの前に、騒ぎを起こすなとかなんだの言って、拝金主義者に譲歩しようとしてましたよねぇ……」
まあ、彼女には彼女の生活があるわけだが、力を合わせて共に自由を勝ち取ってはくれぬものか。そう思うジェニム・ロットであった。
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