第5話 無限地獄!地獄のチャリこぎ発電所!

 「もういい。」


 治療が進んだのか、ケナイント元主席が私の方から外れる。

 

 「あっちだ。」

 彼女が指さす先には……、大きなドーム状の建物がある。町から少し離れており、一見体育館のようにも見える。異質なオーラを漂わせたそのドームへ近づくほど、その熱気を感じていく。


 大きな扉を開いた瞬間、グワアアアアアアーーーーーッとすさまじい熱気が押し寄せる。

 目の前に広がる風景は、自、自転車こぎエクササイズ!?

 アリーナには大量の自転車こぎマシーンが配置されており、みすぼらしい姿の人々が運動しているようだ。


 「これは、エクササイズのレッスンか何かか?」


 ケナイント第十代主席は眉をひそめる。

 「これは……充電だ。」

 「ば、馬鹿な!!充電だと?」


 肩に車輪を装着した拝金主義モンスターがこちらをにらみつける。

 「大馬鹿者ナットシウロンションめ!!わざわざ殺されに戻ってくるとは!」


 「あいつは拝金主義モンスター"チャリンコー"。最下層民を酷使し、生産したエネルギーを売っている。」

 なんていう野郎だ……。最下層民を……


 「やはりこいつは私が倒さなければだめだ!!」

 そういうと、彼女は剣を構え突撃する。


 「はあああああああ!管理主義エネルギーよ、私に力を!現れろ、雷鳴トヨーッノワリア!」

 ズババーーーッ!管理主義エネルギーが凝固し、稲妻が走る。彼女は前に走りながら大きく飛びこみ、宙返りするとその稲妻に騎乗する。稲妻はジェオイツァへと姿を変え突進を続ける。

 

 「またそれか!学習しないやつめ!!」

 チャリンコーが手をハの字に広げると、肩に装着されていた車輪が腕を伝って手にスライドする。

 「くらえ!」

 そのまま手を前に振りかざすと、車輪がケナイントを襲う!!


 「甘い!管理主義者に「学習しない」とは、最大の侮辱!!」

 稲妻の馬が左右に飛び跳ね、見事に交わした。

 「雷鳴槍トヨーッノ・スレアシード展開!!」

 彼女の剣に稲妻が走り、ランスに変化する。これならば、あるいはッ!!


 ギャギャアアーーーーーン!!

 馬が機械音を上げて突撃する。

 「くっ、確実に、強くなっている……だと!?」


 「チャリンコー様、危ない!!」

 最下層民がモンスターをかばおうとする。

 「なッ」

 彼女は進路を変えようとし、集中が途切れる。

 

 「クハハ、だからお前は、勝てないんだよーーーッ!!」

 車輪がブーメランのように方向を変えて、横にそれたケナイント目掛け飛んでいく!!どういう原理なんだ!?


 「ぐわあ!」

  落馬し、その勢いのまま地面に転げ落ち、数回転する。配置された自転車にあたり、さらにダメージを受ける。

 ガチャガチャーーーン!!


 「あぶねえんだよ!」

 「じゃますんじゃねぇ!!」

 「テロリストめ!」


 満身創痍の彼女に罵声が浴びせられる。

 「なぜわからないんだ……なぜ」

 聞こえないが、たぶんそう呟いたのだろう。


 ダメなんだ、人民の支持を得なければ。得られなければこいつは倒せない……

 「お前ら搾取されているんだぞ!?なぜ気が付かない!?」

 私が最下層民に問いかける。


 「俺たちはホームレスだ!こんな身分じゃ、働く先もねえ!チャリンコー様はそんな俺たちに労働の場を用意してくれているんだ!!」

 「クハハ、そうだ!こいつらクズどもは俺がいなけりゃ生きていけないのさ!」



 なんて奴だ、許せない!

 「い、いったい時給はいくらなんだ!?」

 「300ズィンカだ!」


 「馬鹿なリュイナシュノイ!!時給300ズィンカだと!?明らかに搾取じゃないか!?あいつは間違いなくピンハネしているぞ!」

 

 ここに、反論が加えられる。

 「じゃあどうすればいいんだ!?チャリンコー様がいなかったら、俺たちは生きることさえ許されない!!」

 「そうだ、俺はこの設備のオーナーだ。貸してやってるのさ。だからマージンを多めにとっても当然なのだ。持ちつ持たれつなんだよ。ギブアンドテイク。」


 馬鹿な……。完全に洗脳されている。戦わなければ、永遠に奴隷のままなのに、なのに、闘争の意志までもが摘まれている……。


 「御託はこれまでだ!社会構造的車輪!!」

 社会構造同様の車輪。その中心にエネルギーが加えられていく。中心にエネルギーが加われば、その車輪が大きいほど周辺はすさまじい速さで動き、風さえも巻き込んでいく。

 「死ねい!!」


 ズユュューーーーーーーーーーーッ!!

 だめだ!拝金主義エネルギーが強すぎて、引力に巻き込まれてしまう。

 

 「グアアアアアアア!」

 私はすさまじいエネルギーに当てられ、6、7メートルは吹っ飛ばされた。

 バチバチと戦闘スーツが嫌な音を立てる。

 ここまでなのか…… 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る