第3話 ライド・オン!92式重機兵!

 「うわあ!!」

 「助けて、ジェニム・ロット!」


 目を覚ました子供たちが、黒い影に驚き助けを求めている。しかし、あのような巨体にどうやって対処すれば……!


 「今なら、子供たちの管理主義への転向エネルギーを受けて、デバイスに保存された巨大兵器が使用可能ネク・ラッドじゃ!」


 ホログラフィック管理主義じじいが大声で叫んでいる。なんじゃいそのエネルギーは。まあいい、アルバスラ博士のデバイスだ。ようわからんから、使えるものは何でも使おう!


 「展開スラストせよ!なんか巨大兵器!!」


 「92式重機兵オントジェノール・ゲンシェンザースィオン展開スラスト。」

 92式重機兵か!かつて戦場で活躍した帝国連邦陸軍の陸上兵器だ!

 ズドーーーーーーーン!!巨大兵器が亜空間から召喚され、地面が縦に揺さぶられる。私はその振動を受けて空中に飛び上がると、数回宙返りして操縦席に着席した。


 よし!うまくいった。

 「かっこいい~~~!」

 「いけ~ジェニム・ロット!悪い拝金主義者をやっつけろ!!」


 しめしめ、子供たちの心は鷲掴みだ。


 「ええい、何を言っている!悪いのはこの管理主義者なまけものだぞ!」

 拝金主義モンスターが慌ててくぎを刺す。


 ヒュンヒュンヒュン!!迫りくる無数の巨大な機械の触手が機兵に当てられる。ギャギャギャッ!!機械の軋む嫌な音だ。

 「ええいなにくそ!」

 「ウワハハ!所詮はサーヴァリア陸軍に敗れた旧式兵器よ!それそれそれ~~~~~~~!!」


 バチバチと機械の音が上がる。

 あやばい!なんかショートした音じゃないかこれ!?


 ええい、とりあえず、ブラスターだ!!

 パパパパパパパパパパッ!!!!銃口からとりあえずで無数の弾丸を放つ。

 少しでもけん制になるとよいのだが。


 「うわわ~~~~~~~~!!!」

 拝金主義モンスターが、ひるんだ。相変わらず馬鹿っぽい声だ。しかし、まとわりついた触手は緩まない……

 「シュワワ~~~~~~」敵の体から、何か融けるような音がしている。いや、受けた傷跡が、修復している???


 「これが資本の力だ~~!!これしきの攻撃効かぬわ~~!!」

 ギチチチチ!!ズシン!巨体が片膝をつく。


 ま、まずい、このままでは……このままでは……


 「負けるな!ジェニム・ロット!負けるな!!」

 「管理主義者になる……、だからジェニム・ロット、負けないでくれ!!」

 「ジェニム・ロット、死なないで~~~~!」


 こ、これは……ザザーと乱れるスクリーンが治っていく。力が満ち溢れていく。これが、管理主義転向エネルギー!?みんなの管理主義への信心が力になってくれているのか!!


 「うわああああああああ!!」

 92式機兵が腕を広げて、機械の触手を引き裂く!!

 「ば、ブヮカな~~~~~!!」

 「今じゃ!あれを!!!わしの経済政策を使うんじゃ!!」


 すぐさまデバイスを起動し、空中にスクリーンを映し出す。所有カード一覧から、ギャッコー思想のカードを選択し……

 「セット!通貨消費期限制度ソード!」

 「ギャッコー思想、認識しました。」


 景気が悪くなるから不安になって貯金する。貯金するから景気が悪くなる。だったら、通貨を消費期限のある通貨に転換すれば、強制的に資本の流通を促し、資本の過剰な偏りを防げるんだ!!(※高額な買い物は貯金申請制度を参照すること)

 「通貨消費期限制度スラーーーーーーーーーーッシュ!!!!」


 ズギャギャーーーーーーッッ!!!!

 「ヘレード・テェヅェム(お疲れさまでした)~~~~!!!!」

 ドゥオカアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーン!!

 拝金主義モンスターは爆発を起こし、大きな煙を上げる。


 そして機兵がエネルギーを使い果たすと、再び亜空間に収納されていく。私は半透明になりつつあるコックピットから飛び降り、着地した。


 タッ!

 

 「やったよジェニム・ロット!」

 「やっつけたんだ!」

 子供たちが喜ぶ声。そしてもう立ちはだかる黒い影はない。


 「く!今度会ったら、容赦しないよ!!」

 黒いヴェールの女が捨て台詞を吐いて退散すると、代わりに男の子が私に近づいてきた。最初に私を応援してくれた子だ。


 「ありがとう、ジェニム・ロット!」


 「いや、礼を言うのは私の方だよ。君は私だけじゃなく、ここにいたみんなに勇気を与えたんだ。私はそれで戦っただけさ。」

 「僕、お父さんの後を継いで、兵士になるよ!そしたら、一緒に戦ってくれるよね!」


 少年のきれいな目に私は洗われるようだった。戦闘スーツは土埃や武器兵器から発せられる煙ですすけていたが、それを洗い流すかのようだ。

 「ああ、いいとも。君は立派だ。だが、強くなるまでは拝金主義モンスターに挑んじゃだめだぞ。命を大切にするんだ。君は管理主義の希望なんだから。いいね?」


 「わかったよ!」

 そう言うと私は振り向いて、右手の人差し指と中指をピンと伸ばし、宙に一二度振った。

 「ありがとう、ジェニム・ロット!」

 「バイバイ、ジェニム・ロット!!」

 

 背中から浴びせられる歓声。

 ああ^~~~~~~、最高に気持ち、ええんじゃ。

 「ま、わしのおかげなんじゃがね~~~~~~~^^」

 

 私はホログラムの電源を落とした。

 

 

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