閑話 光の戦士の悔恨
今世でもセナに対して、中々素直な気持ちを打ち明けることが出来ないばかりか、勘違いさせるような行動しか取れなかった私だが、前の人生ではもっと酷い失敗をしていた。
まず、セナとの間に絆を築く努力をしなかった。
これにはいくつかの理由がある。
敬愛していたノエルから、貰ったブレスレットが私の左腕に付けられていた。
不思議なことにそのブレスレットが、見えるのは私だけだ。
そして、外すことも出来ない。
まるで呪いのようだった。
このブレスレットがあると不安や焦燥に駆られることも無く、自信が持てた。
一方、意に沿わない行動を取るように仕向けられていたとも言える。
今、考えれば、そうとしか思えないのだ。
たまにノエルからの伝言を持ってくる商人を装った使者も思えば、不気味な男だった。
人好きのするような愛想のいい笑顔を浮かべながら、目の奥は笑っていない。
どこまでも深い闇を思わせる瞳の色が何とも気味が悪かった。
「殿下はあまり、お近づきになるべきではございませんな」
男は確かにそう言っていた。
その時の私もそれに頷いていたのは覚えている。
まるでそうすることが正しいことであるように……。
今世では冒険者として、プライベートでもともに行動したし、王立学園でもそれなりに接点を持てたと思う。
(あくまでモデスト個人の感想であり、セラフィナからは全く、違ったように受け取られています)
ところが前の人生ではセナのことを避けていた。
一切のかかわりを持とうとしなかったのだ。
「それでいいんでございますよ。それこそが真理でございますな」
男が言うことを私はただ、正しいと信じていた。
いや。
信じさせられていたというべきだろうか。
そして、運命の日が訪れる。
私とセナが夫婦と認められたのだ。
「女はそういう生き物でございますからな」
「そうか」
「少しくらい、乱暴な方が喜ぶものでございますな」
「そうなのか」
男が言葉とともに浮かべた笑みがいつもの愛想笑いではなく、どことなく邪で歪なものだったことに私は気付けなかった。
その日、私は無理矢理、力づくでセナの純潔を奪った。
嫌がる彼女の服を引き裂き、その体を思う存分、味わった。
痛がり、抵抗しようとするセナの口にシーツを噛ませ、動けないように手を縛ってから、彼女の初めてを奪ったのだ。
私は彼女が身体の痛みだけでなく、心でも涙を流しているなど知ろうともしなかった。
ただ、彼女に自分を刻み込めることに酔っていたのだ。
そして、何よりも快楽に溺れていた。
やがて彼女が何の抵抗もせず、人形のようになっても私はただ、快楽の為に腰を振り続けた。
この時の私は狂っていたのかもしれない。
まるで左腕のブレスレットに促されているようにひたすら、セナを犯し続けた。
それが私と彼女の歩む道を決定的に別つことになろうとも知らずに……。
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