第21.5話 影に光が差す(改)
「はぁ」
私は自室でひとりため息を吐いた。ため息を吐くと幸せが逃げるというが、今回ばかりは仕方ないのだ。
「先輩の、ばか・・・」
どうせ今頃、冷菜先輩とお楽しみなんだろうなぁ。
まぁ、今はまだ私は先輩の彼女ではないので彼を縛ることなどできはしないのだが。今はまだ。大事なことは2回言わないとね!
「何してるんだろう・・・・」
ダメだ。勉強が全く手につかない。うぅ~責任とってくださいよ、先輩!
スマホを手にとってメッセージアプリを開き、美紀に不満をぶつけることにした。美紀とは
彼女には先輩についてのことは既に話している。
『美紀ぃ~先輩が私以外の人と出かけてるよー、勉強が手につかないよー』
送ってすぐに既読がつき、返信がきた。
『優香が引き止めないからだよ。せっかくいいとこまで来てるんだからそこは頑張らないと後悔するよ?』
分かってる。そんなのとっくに分かってる。
けど、ね?
『あんまりそういうことすると先輩に鬱陶しがられるんじゃないかな・・・。嫌われたくないし』
今度はすぐには返ってこなかった。きっと彼女もため息を吐いているのだろう。ごめんね、ほんと。
2分ほどしてようやく返ってきた。
『ほんと可愛いなぁ~優香は。気持ちは分かるけど、とりあえずは全力で捕りにいくべきだよ!ファイト!』
『あ、勉強は先輩がいなくてもしっかりやりなさい』
あはは。
思わず少し笑みがこぼれた。彼女には感謝しなければならない。少しだけ元気が出てきた。
やっぱりごちゃごちゃ考えるのは私らしくないな、うん。
よーし、頑張るぞー!
『そうだね!ありがと』とだけ返して勉強に戻ったのだった。
***
市内のとある図書館で俺はひとり勉強していた。テスト週間に入ったので部活は休みだ。
1時間ほどは集中できたのだが、それ以降は急に先日のことがよみがえってきて全く手につかなかった。
「はぁ~俺、フラれたんだよなぁ・・・」
思わず机に突っ伏した。
まぁ、分かりきった話ではあったのだが。やはり、やはり面と向かって言われるとさすがの俺も堪えたようだ。大貴は俺のことを明るくて熱血なただのいいやつだと思っているようだが、俺もたまには黒いことを考えるし、落ち込むことだってある。
しょうがないよな、俺、人間だし。
中学のときだったかな。結構練習頑張ってたのにレギュラー外されたことがあったんだよな。あんときも死ぬほど落ち込んだわ。「何で」「どうして」「あれだけやったのに」って。
まぁ、上には上がいるというだけの話だったのだけれど。ま、それに今はエースとして絶賛活躍中だし?
はっはっは。すごいだろ。
「ひとりで何やってんだ、俺・・・」
なんかむなしくなってきた。
スマホを取り出してメッセージアプリを開いた。ある人物に相手をしてもらうためだ。
『おい、鏡原。どうしてくれるんだ』
すぐに既読がつき、返信が返ってきた。なんか2通も送られてきた。
『先輩、何かあったんすか?』
『可愛いなと思ってた紅島さんにフラれたことが頭に残ってて勉強が手につかないんすか?』
こわっ。何こいつ超能力者なの?
そうそう、鏡原とは
『お、おお。そうだ。どうにかしてくれ』
無茶振りして悪いなとは思いつつ、付き合ってくれるのでつい甘えてしまう。
すぐではなかったが2分ほどするとようやく返信が返ってきた。今度4通も送られてきた。
『先輩って落ち込むことなんてあったんすね。意外』
『っていうか、まさか1回フラれたくらいで諦めたんすか?』
『紅島さんだって少なくとも先輩のこと嫌いとは思ってないはず。お友達からも気にするなと言われているんですから諦めずにもっとアタックするべきっすよ。顔もそこそこいいんすからきっといけますって!』
『わかりましたか?とにかく諦めないこと!以上』
「はは」
思わず笑みがこぼれた。
大貴といい、こいつといい、俺のことをなんだと思っているのだろうか。
けど、どうやら人々は明るくて熱血で真っ直ぐな真水俊をお望みのようだからな。その期待に応えるとしよう。
鏡原に『そうだな。サンキュ』とだけ送って勉強に戻るのだった。
よし、もうちょっと頑張ってみるか。
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