第9話
白馬に乗ったお姫様が
お婿さん探しの旅をしています。
行列に並んでいる王子様に出会いました。
「ごきげんよう、お姫様!
あなたもお並びなさいませんか?!」
「ごきげんよう、お並び中の王子様。
何の行列ですの?」
「よくわからないんですが
魔除けの焼き印を印して貰えるらしいです」
「焼き印!!!?」
「ええ」
ええ、じゃなくて。
焼き印!?
えええええ~ッ
「ど、どうして、王子様は、その、焼き印?を受けたいのですか?」
「知らないのですか?今凄い人気なんですよ。
並んだって受けられない人が溢れているんですよ」
「そんなに凄い魔除け効果なのですか?」
「そうなんじゃないですか?こんなに並んでいるんだから」
そうなんじゃないですか???!
「どんな祈祷がなされた魔除けなのですか?」
「さあ」
さあ???!
王子様は笑顔で両手を広げました。
「そんなこと、どうだっていいじゃありませんか。
重要なのは、こうやってお話している間にも行列が長くなってしまっていることです。
お姫様!さっさと並ばないと今日の焼き印が受けられませんよ」
「え~。焼き印ですよね」
「魔除けの焼き印、です。
受けた方が良いに決まってます。 こんなにたくさんの人が受けたがっているのですから。
この分だと明日も受けられない人が続出決定です。
もしかしたら混乱で
焼き印自体打ち切りになってしまうかもしれません。」
王子様の言葉を聴いた行列中の人達が
一斉にスマホを高速タップし始めました。
道行く人達は、行列最後尾に向かってダッシュしました。
行列は、押すな押すなの大混乱です。
焼き印を済ませたカップルが通り過ぎました。
ふたりとも肩を保冷剤で押さえています。
「痛~い。熱いってゆうより、痛いね~」
「でも、思ったほどじゃなかったじゃん。これで色々安心だね♡」
「うん、よかったー」
去ってゆくカップルを
行列の面々が順々に振り返り、ドミノみたいです。
ほんとに焼き印なんだわ・・・・
「お姫様、お急ぎになったほうがよろしいですよ。
今日の分はもう駄目かもしれませんが
もしかしたら明日の予約券が貰えるかもしれません」
王子様の言葉を聴いた行列中の人達が
一斉にスマホを高速タップし始めました。
行列最後尾のほうから怒号が聞こえます。
「王子様、いろいろとご親切にありがとう。
なんだか疲れたので、
保留にしておきますわ」
ホントは疲れてません。
「そうですか。
もしかしたら、
まだ焼き印が無いから
疲れ易いのかもしれませんね。
魔除けの焼き印ですから」
行列中の人達が
深くうなずきました。
「ごきげんよう、王子様」
「ごきげんよう、お姫様。 くれぐれもお気をつけて」
行列中の人達も
口々に「お気をつけて」と言ってくれました。
良い人達です。
良い人達ですが・・・
焼き印は
焼き印。
消えないですから、
と
お姫様はすべすべの肩を押さえました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます