第6話

白馬に乗ったお姫様が

お婿さん探しの旅をしています。




頃良いお年頃の王子様に出会いました。


「ごきげんよう、王子様♪

私とお話いたしませんか?」


「え・・・」

怪訝そうに

王子様は一歩後ずさります。


怪訝をぶつけられて

お姫様も怪訝な心地です。


あれえ?

私、なんか変?

手鏡でお顔チェック。


大丈夫

いつも通りの婚活仕様です。

あらためて

王子様ににっこりと微笑んで見せました。



「あの・・・、ですね」

王子様は言いにくそうに

しかし毅然と言い放ちました。


「そうゆう声かけ、

無礼というか

なんというか、

マナー違反なんじゃないですかね」



なんですとー!!!

お姫様は驚愕しました。


え!何?!

私、無礼なこと言ったかしら?

マナー?

マナーを注意されてるの?

私が?

私が?!


王族ですから

マナーには敏感です。


お姫様はビックリしてフリーズしてしまいました。


王子様はやれやれといった様子で

お姫様を白馬からおろし、

道端のベンチに座らせて、自分も隣に座ります。


お姫様は

なんか、

要介護のヒトになった気分です。

クラクラ・・・


「大丈夫ですか?」

という王子様の声で、パチンとフリーズが解けました。


「ごめんなさい、

マナー違反と聞こえたような気がして驚いてしまいました。

空耳でしょうか?」


「空耳じゃないですよ。僕言いましたから」


うええ~??

とお姫様は再ショックです。



「あの、私

お話しませんかと申し上げただけの筈ですが・・・」


「・・・・・」


「お話するのはマナー違反だと?

ああでも、こうやって今お話ししていますわね、ありがとう。

で、お伺いしたいのですが

マナー・・・?」



王子様はことさらにゆっくりと

首を横に振り

ちょっと面倒くさそうに

しかし毅然としてマナーを語り始めました。


「あなたは私と初対面なのですから、

例えば


こんにちは

突然のお声掛け失礼します。

この度は初めてお声を掛けさせて頂きます。

通りがかり(失礼!)にお見かけさせて頂きまして

素敵な方だなあと、

勝手ながら思いました。

この度、思い切って

失礼ながらお声を掛けさせて頂いた次第です。

もしよろしければ

私とお話などして頂いてもよろしいでしょうか?

やはり難しいでしょうか?

一方的ですいません!

ご検討頂けましたら嬉しく思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

お返事お待ち申し上げます。


・・・とまあ、これくらいは

あって然るべきではありませんか」




めんどくさー!!!

お姫様の心が叫びました。

しかし

実際に叫んだりはしません。

マナー的に。


「急用を思い出しましたわ。

ごきげんようさようなら」

パカラッパカラッ・・・




王子様は

ベンチにひとり残されました。


「なんだ、失敬な。

マナー違反ばかりだな。

ちょっと可愛いと思って、

なんだよ・・・」


ちょっとではなくて

実は王子様は

あんな可愛いお姫様とお話したのは

初めてだったのでした。



戻ってくればいいのに、

と思いながら

めんどくさいマナーが好きな王子様は

しばらく

お姫様の去って行った道を見詰めていました。



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