第9話 決戦までの作戦会議
『
鉈を召喚する。そして、魔法によって大地を広く狩りとろうとするが、薙ぎ払う魔法は失敗した。
「やっぱ、まだ魔法に慣れてないから分かりやすいな。まず呪言は相当苦手だな、こりゃ」
リョクチの言う通り、私は不得意な種類は呪言らしい。
「まあ、変身の方が得意っぽい気がするが、これについては専門家に見てもらうしかねぇな」
紅白戦が控えた水色の空の下。
カワナチームはリーダーを除いてリョクチとともに辺り一面土や岩の岩場へと来ていた。
一応作戦会議ということだがリーダーがいないせいで作戦の「さ」の文字もない。
「おっ、椅子。今、すごい攻撃したよな。もう一度見せてくれんか」
「あっ、いいですよ」
「じゃ、『リピート』」
「え? ん? 体が勝手に……」
椅子が勝手に動き出し技を繰り出した。そのスピードは目で終えるものではなかった。
相変わらず椅子が椅子をしていない。
椅子の戦い方は、体の一部を改造して戦う。脚に関節を増やしたり噴射口のようなものを装着したりとやりたい放題。さらには、板から様々な武器を引っさげた数々の触手が出てくるという常識を容易く覆す暴挙に出ている。
私から見て実力は高い。そんな彼やここにいないカワナの足を引っ張る私が目に見える。そんな未来は仕方ないとは思うのに、そんな未来にしたくないと強く秘める。
「私だって……この道に進んだからにはやらなくちゃ。『
血液に魔法を流し込み、全身に魔法を流していく。全身の隅から隅まで満遍なく。
私は今鳥になっている。
羽ばたくと砂煙とともに羽が舞っていく。
「すごいな。この羽……特殊効果つきか。紅白戦、目立てるんじゃねぇの」
私は姿を戻した。
魔法における"変身"系能力は一般的には身体能力向上だけ恩寵を受けることが多い。人間には真似出来ない動物などの身体能力を利用して戦う。時々、そこに特殊能力が加わるようだ。
特殊能力のある変身系はとても個性的な存在のようだ。
「あんまり目立ちたくないです。できれば普通が良かった」
私は誰かから注目されたくはない。ただ影に生きたい。静かに自由に生きたい。だからこそ、目立つような能力は好きじゃなかった。
「個性における普通か。アイツにも言ったっけなぁ。「普通は普通じゃない」ってな。普通だと思うのは視野が狭いだけだって」
リョクチは帽子を空へ向け回転させながら飛ばした。
「まあ、お前さんは普通がいい、でアイツは普通が嫌という対極なんだがな」
重力によって落ちてくるツバ付き帽子を綺麗にキャッチした。
「オンリーワン。よく言ったもんだ。俺らが思っている普通は「蒼の国」の普通であって他国じゃ普通じゃない訳だ。奴らからしりゃ、俺らの当たり前は個性的な文化に見えるんだ。そうだろ? ここじゃ女はお淑やかで主張しない感じなのがマジョリティーだが、お隣「
私の頭に帽子を被せてきた。
皮膚から少し浮いてた前髪が皮膚にくっつくことで皮膚に痒みを与える。垂れ下がった髪の隙間からリョクチを見る。
「結局、誰もが普通じゃなくて個性的で、誰かからは目立って見えて誰かからはどうでもいいって感じに見えてるもんなんだ。んなこと考えてるだけで面倒じゃねぇの? だからさ、自由にやろうぜ、自由に。目立つ目立たないなんてこと考えずにさ」
人の視線が私を貫く。私は他人にどう思われているのだろうか。私が演じている私として思われているのだろうか。
いつもそんなことに囚われていた。
人からどう思われてるのだろうか。
けど、今は何も考えなくていいか。
「そうですね。ひとまず無我夢中に頑張ってみます」
それに、そんなこと気にしている余裕なんてないから。
その日は能力確認で終わった。
そして、紅白戦の日がやってきた。
「今日は紅白戦だ。そのために彼も呼んでる」
「初めての人もいるみたいだし自己紹介。俺ァ、カミヤっちゅうもんだ。戦いの場である
「仮想空間の中で死んでも実体を死ぬことはないし、そこの建物などを壊しても現実には影響しない。だから、好きに暴れてこい」
カミヤと呼ばれる中年後半以降のおじいさんが無意識下でカッコつけている。
「椅子、好きに暴れてこい。ナゴ、自由にやってこい。何も気にするな」
リョクチに見送られて私達はカミヤの近くへと進む。
「相手チームを全て倒せば終わりだ。負けたらここに戻る。長居する気はいないし、さっさと始めるぞ」
カミヤは私達六人に向けて手を
『仮想空間』
一瞬にして目の前が建物内から岩場のフィールドに移動した。透明なバリアの壁に閉じ込められた空間。作り物のこの場所は、ゴツゴツとした岩が広がっている。
私と椅子、カワナは同じ場所へ、一方で敵対するサクラ、アゲ、チクサは反対側の場所へと飛ばされた。
不安定な足場の上。目の前には巨大な岩が
「ついに始まるか。狂乱の宴が。作戦など不必要。勝てば良い」
黒フードを被った彼女は私達の顔を見ることをせず、向こう側に集中していた。
「新たなパーティの試運転。行くぞ、初心者
私は勝手にヒーラーにされている。それよりも、椅子は……ドラゴンだと思われている。
思わず手と足と口が止まってしまった。
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