命からの手紙

椎葉伊作

【一通目】

 ”

 こんにちは。

 ごぶさたしております。

 日々、なにごともなくおすごしのことでしょうか。

 あなたは、わたしのことをおぼえておいででしょうか。

 おそらく、おぼえてはおりませんでしょう。

 むりもありません。

 あのとき、わたしは、ちいさなちいさな、虫けらでしたから。

 でも、わたしは、はっきりと、あなたのことを、おぼえています。

 あなたは、わたしの、ちいさなちいさな、かよわく、かぼそい、足を、ひとつひとつ、ていねいに、むしりとっていきましたね。

 ひとつ、ふたつ、みっつ。

 わたしが、キイキイとからだをふるわせても、あなたは、むしりとっていきましたね。

 よっつ、いつつ、むっつ。

 足をすべてうしなったわたしは、ほうりなげられ、むざんにも、すなのうえに、ころがりました。

 なにもできなくなった、むりょくなわたしを、あなたは、わらいながら、ふみつけて、うばいました。

 わたしのいのちを。

 ”

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