命からの手紙
椎葉伊作
【一通目】
”
こんにちは。
ごぶさたしております。
日々、なにごともなくおすごしのことでしょうか。
あなたは、わたしのことをおぼえておいででしょうか。
おそらく、おぼえてはおりませんでしょう。
むりもありません。
あのとき、わたしは、ちいさなちいさな、虫けらでしたから。
でも、わたしは、はっきりと、あなたのことを、おぼえています。
あなたは、わたしの、ちいさなちいさな、かよわく、かぼそい、足を、ひとつひとつ、ていねいに、むしりとっていきましたね。
ひとつ、ふたつ、みっつ。
わたしが、キイキイとからだをふるわせても、あなたは、むしりとっていきましたね。
よっつ、いつつ、むっつ。
足をすべてうしなったわたしは、ほうりなげられ、むざんにも、すなのうえに、ころがりました。
なにもできなくなった、むりょくなわたしを、あなたは、わらいながら、ふみつけて、うばいました。
わたしのいのちを。
”
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます