第15話 四日目 夕



 私は自分の部屋の机に向かっていた。使い慣れない万年筆をペンケースの中に押し込み、ボールペンを手に取る。

 これまでの事件について、ノートに纏めておきたかったのだ。手元のカップに注がれたコーヒーは、殆ど残っていなかった。



――――――――――――


①破魔麟太郎の事件


・全員にアリバイなし。また犯人を特定出来うる証拠も皆無

・何故彼が最初に殺されたのか?

→家主だから?(この別荘の構造を知っていた、地下室の事を知っていた?)

→ネット回線のルーターを破壊する為?



②竹之内宝作の事件


・窓は開け放たれていたが扉にはバリケード。窓の外は踏み荒らされていない雪

→遠隔殺人?

・私と柾はシャー芯で部屋から出ていない証明あり。

部屋から出た可能性があるのは井上、エミリー、新堂の3人。

・遠隔武器を使ったと思われる→槍?ボウガン?

・窓際に大量の血痕



③エミリー・パッチの事件


・死体は扉付近

→扉を開けたところを刺された?

→犯人は身内?

・全員にアリバイなし

・室内はカラーボールで汚れていた

→抵抗した痕跡?

・ナイフの柄に右手で握ったような血痕。指紋は期待出来ず


④新堂新の事件(行方不明)


・靴がなくなっていた

→外に出て襲われた?

→何故外に出た?

→逃げる為?何かを見つけた?

・どこに消えたのか?


――――――――――――



 まず大前提として、犯人候補は私、井上素数、柾世良、新堂新、それといるかも分からぬ外部犯。。これは紛れもない事実だ。

 この中から犯人となる人間を絞り込むには、やはり2番目の竹之内が殺された事件が鍵となっている気がしてならなかった。疲労の所為か、頭が上手く働かない。


「しっかりしろ」


 自分に言い聞かせる。


「私なら出来る筈だ」


 気分転換に窓の外を見ようとした。


 が、相変わらず私の部屋は外の世界と切り離されたかのように、木の板でさえぎられ何も見えないのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る