第12話 三日目 夜




***


さて。


時刻はまだ21時12分。


しかし、廊下の灯りは消え、静まり返っている。皆用心して、部屋に閉じ籠っているのだろう。


のだから、感謝しないといけない。



私はの部屋の扉を軽くノックし、声を掛けた。他の部屋には聞こえぬよう、細心の注意を払って。


彼女が扉を薄く開け、顔を覗かせた。


僅か10センチ足らずの間隙。しかし、それだけあれば充分だ。





彼女が驚愕した様に目を見開く。


声をあげようとするが、ヒューヒューという掠れた音しか出ない。


当然だ。喉にナイフが突き刺さっているのだから。


彼女の手が緩んだ隙に、素早く部屋の中へ身体を潜り込ませる。


暴れて大きな物音を立てられると不味い。


私は彼女の身体を瞬時に拘束した。自由なのは左手だけだ。


彼女がかぶりを振って、左手に持つ何かを投げつけようとする。私は身体を捻り、それを躱す。


投げたそれは私に命中することなく、あらぬ方向へと飛んでいった。


やがて、彼女の膝がガクガク震え出す。


その瞳に私の姿が映る。


彼女が今感じている感情は、絶望だろうか。


それとも、憎悪だろうか。


それとも――――――――――――――

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