第11話 三日目 夕
――道内・某警察署――
「御霊探偵と連絡が取れない?」
スーツに身を包んだ女性が、部下と思しき男に声を掛けられ振り向く。ストレートに伸ばした長髪と知的そうな眼鏡が、いかにも『デキる女』な雰囲気を醸し出していた。
「はい。例の『ジャック・ナイフ』の捜査に関わる、『
「また事件に巻き込まれたか。そろそろあいつには専用の衛星電話でも持たせるべきだな」
女性が溜息交じりに毒づいた。
「足取りは追えるか?」
「可能ですが、この天候だと簡単にはいかないでしょうね」
男が窓の外を見ると、猛烈な吹雪が外界を大いに暴れ回っていた。
「悪いが、今日は残業祭りになるぞ。人員はこっちで集める。御霊探偵の安否確認を迅速に行え」
「はい」
女性は手に持っていた書類を適当に机上のファイルの山に突っ込み、スマホを打ち始めた。部下たちに緊急連絡メールを送っているらしい。
「…冴木さんは、偉く御霊探偵の事を高く買っているんですね」
「そうか?」
「冴木さんぐらいですよ。御霊探偵の動向を逐一気にしている刑事なんて。
他の刑事はむしろ関わり合いになろうとすらしない。彼女に関わったらこっちの命が危ないって、他の部署では
彼女に対して、何か特別な事情でもあるんですか?」
女性がスマホを打っていた指を止める。
「…別に、ただ放っておけないだけだ。御霊の事も、それに巻き込まれた人たちの事も、な」
「しかし」
「そんな事は、今はいい。御霊探偵が何か『ジャック・ナイフ』に関して、重要な情報を掴んだかもしれない。
そうだな、『霊鏡会』にもコンタクトを取れるか確認しろ。あいつら御霊の大ファンだから、何か知っているかもしれない」
「しかし、御霊探偵によると、『霊鏡会』のメンバーの中に『ジャック・ナイフ』がいる可能性が高いと言っていました。
連中が犯人を匿おうとした場合、御霊探偵について知らぬ存ぜぬを突き通す可能性もあります」
「その時はむしろ、『霊鏡会』が怪しいって確信を得られたと前向きにとらえればいいさ。さぁ、立ち話はこれぐらいにして、行動に移すぞ」
女性の言葉に男は頷き、コートを羽織りながら部屋を出ていった。
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