赤マル
一ノ瀬
キミの香り
切っ掛けは、共通の知り合いの件に関しての相談だった。私は、将来のことや家庭のことなどで、生きることが嫌になっていた。それは今も変わらないけれど…。そんな中で、事情を深く聞かないでくれて、優しくされてしまったから、好きになるのは一瞬だった。我ながら単純だと思う。
ネットでの関係だから、「辛い。死にたい」なんて投稿をすると、電話をかけてきてくれるキミ。大して喋る訳でもないのに、ずっと繋いでくれている安心感。変幻自在で、優しい落ち着いた声を聞く度に、心が跳ねるのを感じた。
と、まあこの文章を見ただけだとありがちな恋愛話かと思うでしょう。
ところが実際そうでもなくて、相手からすれば私は都合のいい性欲処理道具。いつも相手のタイミングで電話がかかってきて、電話越しで相手に指示をされながら自慰行為をする。時には、ビデオ通話でそういう事もする。流されて言うことを聞いてしまう私が悪いのだけれど、好きだから断れない。キミは私の好意を知ってるのに、なんて心の中で悪態をつきつつ、この関係を辞められない。どういう形であれ、役に立てるのが嬉しくて。そう。私は彼に依存をしている。通話が切れた瞬間に、心が痛むのに辞められない。私を依存相手だと言うけれど、他にも、依存相手がいる。捨てられるのが嫌で、なにもかも許して知らないフリを続けてしまう。
キミからの連絡が無いだけで、病んでしまうのだから。
会ったことすらない君を感じたくて、君の好きな煙草を買って、むせながら吸ってみた。今では、むせずに普通に吸えるようになったよ。吸い慣れれば、キミの好きな煙草から私の好きな煙草に変わるのかな。
キミは今、誰のことを想っていますか。
結ばれなくてもいい。利用するだけでいいから、願わくば、私のことを必要として欲しい。
心の傷にそっと絆創膏を貼る。
いつか、好きな相手と結ばれたキミを心から祝福できますように。
それまではどうか、そばにいさせてくれませんか
赤マル 一ノ瀬 @suzu_k_
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