3-8.part.P:幕の隙にも満たない

 目を開けると、よっぴーがベッドの横に座って、教科書を読んでいた。

 まだハッキリしない頭でぼんやり見ているとピタッと目があった。何て言えばいいか分からなくなって、とりあえず「おはよ」というと彼は恥ずかしそうに目を伏せて、「ごめんね」と言った。どうして彼が謝ったのか分からなくなくってボクは黙る。

 いや、分かりたくないだけだったのかもしれない。

「僕ももっと強くなるから」

 窓の外が眩しくて、今日は快晴なのだと気づいた。ボクは彼への言葉がまだ見つからず、声を出さずに微笑んだ。

「ポアくんも今はゆっくり休んでね」

 深く力強い瞳。晴れた空はいつも通りに青かった。

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