0-2. "部屋"の噂話

 暖かな昼下がりの午後。窓から爽やかな青空が覗く白い廊下。生徒たちの愉しげな声声が響く。

 これはそこで囁かれたちょっとした噂話。



 ――ねぇねぇ、知ってる?不思議な部屋の話。


 何それ?……あー。気づいたら、知らない部屋にいたってヤツ?


 そうそうそう!

 がらんとしたその部屋には何にもない。誰もいない。ただ真ん中に、ひとつ椅子があるだけ。

 それなのに、願った物が何でも手に入る!っていう夢の部屋。望むだけで、ポンっと現れる。食べ物も、玩具も、お金も、なーんでも!

 ただ、どうやって行くのか、どうすれば行けるのか。誰も知らない夢の部屋。


 あんなのただの噂話じゃないの?


 いやいやいや。先輩がこの前行ったらしいんだよ!それで、めっちゃ気前よくなってさ、この前も昼飯奢ってもらっちゃったよ!

 あーあ!俺も行きてぇーな!!


 ……。

 なぁ、もしかして…。その先輩って、今、行方不明って噂のあの…?

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