姉失格
「うーん……」
その夜、私は自室のベッドに横たわりながらも中々寝付けずにいた。
考えるのは桜のこと、そして葵のことだ。
まず、桜。今日突然お風呂に侵入してきたことはビックリした。変わらず私のことを好きでいてくれたのは嬉しかったけれど、でも、その好きは本当に変わらずなんだろうか……?
そして葵。葵の好きは間違いなく姉に向ける好き……だと思っていたけれど、思い返してみれば、今日の好きの感じは少し普段と違った気がする。それこそ、葵がそういう好きの感情を知ったとき、今の私に向けた好きがどう変化するのか……なんだか考えるのが怖い。
(でも、私はお姉ちゃんだし……それにもうちゃんとした相手がいるんだし! ……ちゃんとした?)
果たして同性の恋人というのはちゃんとした相手になるんだろうか。
言ってしまえば二股している状況はちゃんとしたとは言えないだろうし――
「お姉ちゃん、もう寝た……?」
――!!!
なんて考えてたら実にタイミング良く、部屋のドアが開けられた。
そこにいたのは桜、そして葵。私の愛妹達だ!
「お姉ちゃん、その、あのね……」
「葵たちも一緒に寝ていい……?」
もじもじと、顔を赤くしながら、目を潤ませながら、2人はそんなことを聞いてくる。
――大好きっ、四葉ちゃん!!
――私は、何よりも四葉さんのことが好きだ! 愛してるっ!!
ぎゃーっ!! リフレイン!!
なんで今思い出す!? なんで今思い出す!!?(二回目)
相手は血の繋がったシスターズのはずなのに、どうしてかあの日の由那ちゃんと凜花さんに重なる。重なってしまう。
明らかに危険な香りだ。良くない。本当に良くない。
けれど、私は2人のお姉ちゃんであり、妹達の要求を拒む術を持たない。
だから――
「お姉ちゃん、大好き……」
「葵、お姉ちゃんと結婚しゅる……」
僅か数分後。
シングルベッドの上で両腕をそれぞれ妹に抱きしめられ、ステレオでそんな甘い寝言を聞かされながら、
「ああ、どうしよう……」
私は頭を抱えることもできないまま、ただ力なく呻くのだった。
百合の間に挟まってしまった女 としぞう @toshizone23
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