第2話

 Q県のSという一族が数年に一度の頻度で土地神に生贄を捧げているというのは、事実である。事実であった、というべきか。殺人事件として発覚したのは2年ほど前のことだ。生贄になるはずだった子どもが神事の直前に閉じ込められていた蔵から脱走し、子どもの足では信じられないほどの距離を走って山を降り、国道に飛び出し、旅行から帰る途中だったという都内在住の男性(この男性については青山羊円の件にはまったく関係ないので割愛する)のクルマに保護されQ県と隣接している別の県の警察に連れて行かれることですべてが表沙汰になった。男性が子どもをQ県の警察に連れ込んでいたら、おそらく、何もかもがなかったことにされただろう。


 その子どもはその年6歳になる女児だったという。

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