四、かえるのかっくん
ケロケロ、ケロケロ。
喉の声帯を極限まで広げ、盛大に鳴き声を響かせる。頭に自分の泣き声が響き、ときどき目眩を覚えるが、これがまた酔っているようで心地よい。
俺は、仲間内では「かっくん」と呼ばれているアマガエルだ。
俺たちの住んでいるこの川は、果たして何処から始まって、何処で終わるのか。その疑問を、俺たちは死ぬまで解決できない。生まれたときからこの場所にいて、きっと、これからも一生この場所で生活するのだろう。
この川からは、時折人間の足音や、話し声が聞こえる。
近くにキャンプ場があるらしいのだ。今夜も、人間が何人かで話している。声の種類は、五種類。男が三人、女が二人だ。
蛙の世界では、人間は憎き存在とされている。
罪もなき蛙を、自動車とかいう大きな化け物で潰していくからだ。だが、僕はその化け物の姿を見たことがない。大きな二つの目から、ぎらぎらと嫌らしいほど明るい光を出しているようだが、果たしてそれがどんなに恐ろしい物なのか、見たこともないので想像がつかない。
俺の仲間内で、その化け物に引かれて死んだ蛙もいない。
というわけで、俺は人間のことを敵視してはいなかった。むしろ、一度でもいいから友達になってみたい。
「へー! そうだったんだ」
林の向こうから、女の声が聞こえる。楽しそうだな。
かっくんは、近くの大きな葉っぱの上にジャンプした。一寝入りしようと思い、目を閉じた。
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