キミとボクの異能譚

Takune

目覚めの時

「……ここは?」

 夕日が差し込む図書館の中で、黒髪・黒目の一般的な日本人といった容姿の少年が呟く。

 周囲には休日であるにもかかわらず、少年以外の人影がない。

 本をめくる音が聞こえそうなほど静かな空間だった。


「何で僕は個々にいるんだろう?」

 この場所に来るまでの記憶がなく、自分がなぜこの場所にいるのかが分からない。

 不思議に思いながら周囲を確認する。

 辺りを見回すとどこを見ても本…本…本…。


「図書館なのかな?それにしては何かが違うような」

 少年は異様な気配を放つ本を見つめながら言う。


「ん?奥に何かある」

 初めに立っていた場所の先に開けた空間を見つける。

 恐る恐る進んでいくと、そこには不思議な光景が広がっていた。

 中央に円テーブルがありその周囲には先ほど異様な気配をしていた本が浮かんでいる。


「……!」

 その現実離れをした光景に言葉を失ってしまう。

 どれほどの時間そうしていただろうか?

 気が付くと机の周囲に浮いていた本が消え、一冊の本が目の前に浮いていた。


「……」

 理由はわからないが、自分がこの本に惹かれているのを感じる。

 意を決して本を手に取る。


「なんて言う本だろう?」

 本の題名を読もうとするが、仄かに光を放つ文字は見たことのない言語で書いてあり、読むことができない。

「なんだろう?この文字」

 何とか解読しようと試みるが、やはり読むことはできなかった。

 題名を読むのは諦め、中身を確認するため本を開く


「どういうことだろ」

 題名が読めなかったためあまり期待せずに本を開くと

「白紙?」

 そこには何も記されていない真っ白なページがあった。

 不審に思いページをめくっていくと

「いてっ!」

 ページをめくる際に、指を紙で切ってしまい本に血が付着した。

 すると突然本が輝き始めた。


「なんだッ!」

 思わず手で顔を守るが、余りにも強い光で視界が白く染まる。


「ここは……」

 光が収まり、辺りを見るとそこは図書館と思われる場所の入り口であった。

「あれ?本がない」

 気が付くと自分の手元から本は消えており、服装も私服から制服に変わっていた。


「……一体なんだったんだろう」

 いきなり知らない場所に立っていたことや、その後の不思議な体験ですでに頭がパンク寸前であった。


「一度帰って休みたいな」

 何か嫌な予感がする。

 休めば頭の整理がつくだろうと思い、入り口へと足を向ける。

 図書館から家まではすぐだ。歩いて三分もかからないだろう。

 しかし図書館から出るとその顔が驚愕で固まった。

「なんだよ…これ…」

 図書館のある丘から見下ろした町は赤く染まっていた














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