第40話 思念術:水蒸気爆発
シズと走り出す。
「どうするの?」
シズも心に迷いがあるのだろう。今からでも遅くはない。今からでも僕達は共和国に戻り、僕達を正当化できるチャンスがある。そして、何より、僕達が共和国側につくと、勝利は確実なものになるだろう。
「僕は、帝国軍だ」
それを知っていながらも、僕は言葉を絞り出す。事実は曲げられない。
「そうだね!うん、良かった!」
「シズも同じ考え?」
「うん!」
そうか。それは良かった。
「それじゃ、行ってくる」
立ち止まり、シズを見る。
「うん。行ってらっしゃい」
相手が特務聖剣部隊だったら、僕の思念術など少しも役に立たない。それをシズも理解していて、直ぐに思念術を行使し始める。
まだ慣れていないから、水蒸気爆発を制御することは出来ない。
が、しかし、今回は制御をしなくても良い相手だ。味方、帝国兵が範囲に入らないように気を付けるだけ。刀身が水色に輝き始め、シズの思念術を体で感じる。
共和国軍の頭上一メートル。見えないがその場所を意識し、剣を振る。
爆発を設置出来た感触を得る。
数秒後、爆発が起きた。空気は震え、大地は削れる。衝撃波が発生し、僕がいる場所でも立っているのが精一杯の状況になる。
戦場には静寂が訪れた。
帝国兵士も、共和国兵士も何が起きたのかが理解出来ない。
ただ、無慈悲な殺戮がそこには存在した。
しばらく経過した後に、共和国軍が居るはずの場所が燃え始めた。
これは水蒸気爆発の影響ではない。ラウラが炎を発生さえた後に、ティトが突風により炎を成長させる合わせ技だ。僕はこれを過去に何度も見てきた。
炎が消え去ると、そこに共和国軍の姿は無かった。
だが、無数の死体は転がっている。顔は黒くなり判別出来ないが、誰かが分かってしまう。
何度も助けて貰った先輩や、精錬場時代から一緒に過ごしてきた同僚。
それらは、紛れもなく僕が殺した者達だった。
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