第35話 おもちゃ
「お帰りー!!!」
「うん、ただいま」
「ただいまです」
シズが玄関まで迎えに来てくれる。
「今日のご飯は何ー?」
「ハンバーグですね。ゆっくりと待っていてください」
「やった!丁度食べたいと思っていたんだ!!ミユ、大好きぃ!!」
「・・・そうですか」
シズに抱きつかれ、満更でもない顔をするミユ。この2人は仲が良い、悪い時の差が激しすぎる。
制服から着替え、お茶を用意し、ゆっくりとくつろぐ。
「シズ、学校はどうだった?」
「楽しいよ!友達沢山出来たし!」
「・・・そうか」
「うん!」
どうやら僕とは異なるルートを選んだらしい。
「共和国軍出身だと言ったらダメだぞ?」
「言うわけないよ。私、そこまで馬鹿じゃないよ!?」
「・・・・」
馬鹿にされた、と頬を膨らませて怒るシズだが、実は僕の方がダメージを食らっている。
「ですよね。絶対にそういうことは言わないですよね」
台所で何やら野菜を切っていたミユが会話に参加する。
「うん、勿論だよ!」
「・・・・」
僕、瀕死。都合が非常に悪いので、話題を変える。
「シズ、友達沢山出来たって言ったけど、話しかけることが出来たのか?」
素直に、人見知りのシズがどのように友達を作ったのかが気になる。
「話しかけてくれた子と頑張って話すようにしたの! ネオと同じように頑張ったんだよ!」
「そうか。良く頑張ったな」
そう言って膝の上に乗ってきたシズの頭を撫でる。
「ネオ様も沢山話されていましたよ」
ミユが何気にシズへ伝える。
「そうなの!?」
「う、うん。そうだよ」
そう、僕については沢山話されていた気がする。うん。多分、シズは僕が誰かと話していたと勘違いしているけど。
「あと、話しかけてくれた人を病院送りにしていましたね」
「そうなの!?」
「う、うん。そうだよ?」
ミユ。ここぞとばかりに僕をおもちゃとして仕立て上げる。
「ダメだよ? ここでは普通に暮らさないと」
「・・・はい」
シズから説教をされるという前代未聞の事態に遭遇し、戸惑う。
「何があったか知らないけど、ちゃんとしなくちゃダメ!」
「・・・ごめんなさい」
「分かったなら大丈夫だよ」
「・・・はい」
そう言って僕の膝に座りながら、僕の頭を撫でるシズ。その様子を見て、台所のミユは必死に笑いを堪えていた。
「あ、でも一つ約束して」
ずっと言えなかったことを思い出す。
「思念術は使わないでね。ここにはあの病気について知っているお医者さんが居るか分からないから」
思念型統合心病。シズの思念構造が原因の病。連続して思念術を行使すると、心臓に負担がかかり、血液の循環が正常に働かなくなる。
「あ、それ治ったよ!」
・・・へ?
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