第6話 射撃場

自室に帰り、ストレッチをしようとしていたらドアが空き、シズが入って来た。


「訓練お疲れさまです!」


何故か敬礼をくれるシズ。


「うん、少し疲れたかな。ありがとう」


敬礼を返すと、何かがプツリと切れたようにベッドに崩れ落ちるシズ。


「お腹空いたぁ」


「あー、そうか。もうそんな時間か。それじゃ、このストレッチが終わったら一緒に行こう」


時計を見ると12時になろうとしている頃合い。


確かに、シズは午後に訓練があるし、早めにご飯を食べておきたい。


「午前中は何してたんだ?」


「何もすることないから寝てた!」


「えー・・・・」


やっぱり、何か有益な趣味をシズに教えてあげないとな。このままだと、趣味一つすら知らずに生きることになってしまう。


「よしっ、ご飯食べに行くか」


体は最低限だがほぐすことが出来た。シズの訓練も近いし、早めに食堂に行こう。


「うん!」


二人並んで廊下を歩く。血なまぐささとはかけ離れた生活をここ数日間味わっている。


このまま・・・このまま、こんな生活を送ることが出来たらどれ程良いんだろう。


シズの訓練を最後まで見届け、夕食前にラウラと射撃場へと向かう。


「そもそも、銃を触ったことが無いかもしれないなぁ」


「あるわよ。私達が8歳の頃に1度だけ精錬場で実習があったわ」


「あったっけ? 覚えてないな」

 

記憶を遡るけど、そんな実習は覚えてない・・・いや、あった。


「あった! あー・・・そういえば撃ってたよ!」


「そうでしょ? ネオと同じ実習だったもの」


「良く覚えてるね。もう忘れかけてたよ」

 

言われるまで完全に忘れていたな。やはり、天才。記憶力も飛び抜けている。


「・・・ネオが居たからよ」


「ん?」


「何でもないわ。早く行きましょ」


「あ、うん」


今朝のシズもそうだけど、ラウラもか。少し機嫌が悪くなったラウラの後ろをついていく。


どうやら今日は大事な事を聞き逃す傾向がある。


これ以上、失態を重ねないように注意して今日は過ごそう。


射撃場につくと人は誰も居ない。基地の端に位置するロケーションも影響しているだろうけど、何より一番の理由は銃が使われていないという事実だろう。

 

「ほら、私のものを貸してあげるわ。弾は取り放題だから何発でも撃って良いわよ」


台の上にある大量の弾丸を見ると、ホコリを被っている。本当に誰も使っていないんだろうな・・・。


「えーと、これであってる?」

 

直感で弾を入れ、リロードを行う。

 

「そう。合ってるわよ。そして、的に撃ってみて」

 

「うん」


反動を抑えるために強く握り、的を狙う。指をトリガーに掛け、弾を放つ。


「まぁまぁね」


的に残された弾痕を見て、ラウラが評価する。

 

「でも、撃ち方が少し変ね。銃を持つ手に力を入れるのは良いけど、体全体を使って柔らかく撃ってみて。ほら、こんな風に」


ラウラが3発立てつづけに撃つ。さっきの僕と違い、撃っても体がピクリとも動いていない。的を見ると全てが中心に近く、どれ程ラウラが上手いのかが一目で分かる。


「これは・・・練習だね」


「そう。銃はセンスとか体格ではなくて努力次第でどうにもなるわ」


確かに。剣はセンス、特に体格差を努力で埋めることは難しい。


だけど、銃には体格が一切関係ない。ただ、聖剣と同程度の威力を発揮出来るか、と言われればその問いにイエスとは答えられない。

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