第3話 シズ
宿舎の前に着くと、エントランスのソファーに一人の少女が居るのを視認した。
「お、出迎えてくれてるじゃないか」
「部屋で待っててって言ったんだけどね」
ニヤニヤとするティトに苦笑しながら答える。
「仲良いな。俺なんて部屋に帰ったら殴られるぞ」
「殴り返すんじゃないぞ、ティト」
「分かってるって。軍事裁判沙汰にしたくないからな」
軍事裁判にはならないと思うけど、責任を持ちたくないから黙っておく。
あと、こんなことをティトは言っちゃってるけど、実際には仲良いことを僕は知ってる。
エントランスの自動ドアをくぐると、シズが目を輝かせてこちらによってくる。
「ただいま!」
「うん、それは僕のセリフだよ?」
「私の下にネオが帰ってきたから「ただいま」であってるんだよ!」
「そういう理解もあるのか・・・」
何故か妙に納得してしまった。
「シズ、久しぶりだな!」
「あっ・・・えっと・・・」
ティトに声を掛けられると、僕の後ろへと姿を隠すシズ。
「・・・シズ、もう僕の背中に隠れるのは難しいよ」
2年間で身長が伸びたシズは、僕の背中に隠れようとしても体がはみ出してしまう。
「ほら、俺だって。覚えてないか?」
ティトが必死に自身の存在をアピールする。
「・・・こんにちは」
「おおおっ! ネオ! 遂に返事をしてくれたぞ!」
「う、うん。良かったね」
思ったより興奮しているティトに戸惑いながら返事をする。
「おう! また今度な!」
満足したのか、嬉しそうに階段を駆け上がるティト。
「・・・誰だっけ」
「おい、ティトに喜びを返してあげろよ」
「あ、ティトさんだ。最近一緒の任務じゃないから忘れてた」
うん、ティトの幸せの為に名前を忘れられていた事は言わないでおこう。
「早く部屋に行くぞ。風邪を引いたらどうするんだ」
「ネオが看病してくれる!」
「しません」
「えー、酷い。それは酷いよ!」
「分かった、分かった。早く部屋に戻るぞ」
シズの部屋は三階の302号室。ちなみに僕の部屋は隣の301号室。
兵士と思念術士の性別が同じ場合だと相部屋になるけど、異性の場合は別部屋になる。
とは言っても大多数が異性のペアだ。何しろ、先天性の思念術を持つ子の九割九分が女子で、聖剣部隊の兵士は殆ど男子。
ラウラのような同性のペアは滅多に居ない。
「久しぶりにネオの部屋に行きたい!」
「朝も来てただろ!」
軽くシズの頭を叩く。
「前にも言ったけど、朝方に僕のベッドの中に入るのは止めて欲しいな」
「なんでー?」
「いや・・・うん、まぁ、常識的に考えておかしいでしょ?」
「分からない!」
満面の笑みで常識を拒否された。言いにくいんだよな・・・。
シズはいわゆるグラマーと呼ばれている体型ではなく、かといって胸部がない訳ではない。ごく一般的な女の子の体型であり、14歳となると発達するものは発達してきている。
だから、一緒のベッド寝られると、触らないように細心の注意が必要となる。
実際、僕の睡眠時間はシズがベッドに来るまでになってる。
いや、これは僕が我慢すれば良いだけのことだから別に良い。
一番の問題はモラル的なものだ。17歳の男子と、14歳の女子が血縁関係でもないのに一生に寝てるのは間違いなく、危険な香りがする。
それが常識ってものだけど、常識を吸収せずに育ってきたシズには理解させるのが難しい。
・・・それとも、これって案外シズだけではないのかもしれないな。今度、ティトに聞いてみよう。
尚、聞いた結果、ティトは無言でネオから後ずさりをした。
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