23話 魔人領
俺達は、魔人領に入ってきた。
ここからは潜伏しながら進まなければならない。
「(ここが魔人領か。潜伏して進むぞ)」
「「「「「「「(はい)」」」」」」」
俺達はコッソリと進む。
が、俺はあることに気づく。
「(どこに泊まる?)」
「(変装用の魔道具がある)」
「(成る程。魔人に変装して魔人の宿に泊まるのね。考えたわね、ジーナ)」
「(人数分ありますか?)」
無いととても困るのだが。
「(あ)」
無いのかよ。
「(それなら俺が作る!)」
「(大丈夫なのか?(キラリ))」
疑われている件について。
俺は魔道具作製の能力スキル持ちだぞ?
「(そういや、やけに魔人族騒がしくないか?)」
そう。セイイチの言う通り、魔人族がとても騒がしい。
何かあったのだろうか。
アデリーに聞けば分かるか?
「(そういえば人間族の国、日ノ本王国までを攻める計画を企てていたが)」
「(それ、ヤバいですよね)」
東都のピンチ!
「(俺が東都への<空間転移門>を開く。戻る人は戻れ!)」
そういうと、ジュンジュン、セイイチ、ジーナが<空間転移門>をくぐった。
因みに、<空間転移門>は俺が最後の能力点を10ポイント使って手に入れたスキルである<魔法技術進化>で魔法技術を強化させ、<魔法創造>で魔法を作った物だ。
「(この人数なら簡単に魔道具を作れる。<魔道具作製>)」
そうして俺は、<変身>の能力を付与して変装用魔道具を作った。
「(サトシ。まさか魔道具を作る人数を減らすために三人を返したんじゃないわよね。)」
「(そそそ、そんなわけないじゃないか。取り敢えず変装しようぜ!)」
「(はい、分かりました!)」
そして俺とエリーゼは数秒間見つめ合う。
「(別にいちゃついてもいいけど、TPOは弁えて!)」
リョースケの悲痛な声によって現実に帰還する。
どうしよう、ライバルのお墨付きを貰ってしまった。
「(あぁ……)」
「(き、気を取り直して路地裏で変装しましょう)」
路地裏に行く。変装する。潜伏を解く。
「はぁ、疲れたわね」
「おいおい、サトシを見習え。魔王戦の前に疲労が溜まっているなんて、駄目だぞ?」
「えぇ。分かったわ。じゃあちゃんと休憩しないとね。その為にはいい宿とってね」
「容赦ない!」
「わ、分かった。いい宿をとるよ」
イルマの恐怖。イルマ怖い。
俺たち一行は宿に向かった。
「はい、三人部屋二部屋で一泊一魔銀貨です」
魔人領では、一円=一魔石貨、一魔鉄貨=百円、一魔銅貨=一万円、一魔銀貨=百万円、一魔金貨=一億円、一魔白金貨=百億円である。
あ、魔王貨幣もあったな。一兆円のやつ。
「高い……。一魔銀貨もしたか……?」
アデリーは三十魔王貨幣と百魔白金貨の稼ぎがあるらしい。一年で。
総資産が怖い。マジ怖い。
ここに来てから、怖がってばっかりだ。
「じゃあ部屋割りを考えよう」
おぉ、アデリーや、有難い。
「先ずイルマとエリーゼでしょ」
「何言ってんのよ。エリーゼはサトシとよ」
マジか。嬉しい事には嬉しいが、こうも露骨にくっつかせられるとは、思っていなかった。
「でも、イルマがアデリーとリョースケと寝たら、イルマは襲われそうなのだが」
「俺はアンデッドだから襲いたくても襲えねーよ」
襲いたいのか。この変態め。
「襲う気満々な件。肉体あったら襲われていたぞ、イルマ」
「脱がすくらいはするかもしれない」
おい。やめろよな。
「アウトだろうが。リョースケは?」
リョースケのほうがやらかしそうだ。
「僕はそういう事はエリーゼちゃんとしかしない!」
「つまり一生しないのか」
俺はエリーゼを渡さない。一生。
「ぜ、前言撤回……」
流石は思春期男子。
「じゃあ部屋割りは決定でいいわ」
「オッケー」
まだ昼間だし、観光をする。
「串焼きらしき物も売ってるぞ!」
「これは「焼き串」というんだ」
「焼き串?」
まるで串を焼いて食べるみたいじゃないか!
「この肉を模した持ち手を持って、焼けた串を食べるんだ」
「本当に串を食べるのか⁉」
「そのようです」
エリーゼはある方向を指差した。
そこには串焼き……ではなく「焼き串」の串に当たる部分を、仲良くカップルがかじっている姿があった。
「……そうだな」
さっき寿司を食べたが、ネタが下になっていた。
シャリとネタが逆なのだ。
ここは何の国だよ。
いや、魔王国だけど。
「美味しいわよ?食べないの?」
「食べるけど」
食べてみると、串焼きの味だった。
串のほうなのに!
納得できない!
「美味しいですね。串なのに」
「あぁ、そうだな。いつか落ち着いたらまた来ような。俺が暴れて荒れてなかったら」
日も暮れたので、今日は一旦帰ることになった。
ホテルに着いた。
「着いたな。じゃあお休み」
「「「お休み」」」
「お休みなさい」
イルマとアデリーとリョースケに挨拶をして別れ、エリーゼと部屋に行った。
俺は部屋について風呂に入ってベッドに横になり、明日は早いので明日に備えて布団を被って寝た。
「今日は満足したなぁ……」
エリーゼはまだ起きていた為、ちょっと気になったが寝た。
ちょっとあの変な日本モドキの感じを味わいたくは無かった。
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