24話 予想外

 今俺は、混乱しています。


 エリーゼがいません。隣で寝ていたのに。




 取り敢えず、イルマたちに聞いておこう。


 部屋を出てイルマたちがいる部屋へ向かう。




「イルマ。エリーゼ見なかったか?」


「見てないわ。何かあったの?」


「特に何もないけど……」


「何も無い、ねぇ」




 疑われてる⁉ここは誤魔化さなければ!


《……何故でしょう。誤魔化す必要性を感じません。仲間なので、話したほうが良いのでは?》


 確かに。話すとするか。




「実は……。エリーゼが居ないんだ」


「大惨事じゃねーか」




 ……いつの間に起きてきていたのだアデリーよ。




「いつからいないの?」


「今朝、目覚めたときからだ」




 早く探さないと、何が起きているのか分からない!




「早く探さなきゃ」


「ちょっと待って、サトシ」




 何かあったのだろうか。




「何だ、リョースケ」


「僕たちが人間であることを見破られているかもしれない」




 リョースケが言うにはエリーゼがもし、奴隷商人に捕まっていたとしたら、人間族と言う事がバレているかも知れないらしい。


 成る程。一理あるな。




「じゃあどうしろってんだ?」


「俺が思うに、変装を変えればいいと思うが」


「そういう事だよ!」




 まあいいけど、どうやって助け出そうとしているのだろうか。


 助け出した後も考えろよな。どうやって逃げるよ?




「よし、行こう!」




 おいアデリーそれでいいのか。




「あの……。二人とも。どうやって助け出すの?」




 ナイスイルマ!




「「……………………」」




 沈黙が長い!


 図星かよ!




「おい。助けに行くんじゃなかったのか?」


「「考えてなかった」」




 ちょっと。図星とか笑えないから。


 早く考えよう。




「と言う事で、第一回作戦会議!」


「お前恋人攫われてよくそんな呑気でいられるなぁ」




 絶対助け出せるから、そんなに焦らないんだ。




「取り敢えず作戦考えなさいよ。ガキ」




 俺は25歳なんだが。ガキじゃないぞ。




「えっと僕は、奴隷を買うふりをしてエリーゼを取って逃げるのが良いと思う」




 真剣モードだ!わーい!




「それだと他の魔人族に捕まるぞ。俺は、最初から魔人族を蹴散らしてエリーゼを奪えば良いと思う」


「今できる作戦としてはそれが一番良いと思うが、もっと良い作戦が無いとも言い切れない。<補助人格>に聞いてみるよ」




《良いのではないでしょうか》


 おい。投げ槍だな。露骨にダルそうな声出すなよ。


《自分の事は自分で決めて下さい》




「どうだ?」


「それで良いらしい」


「じゃあ行こう。エリーゼを助けに」




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 時は戻り、東都……。




 俺、セイイチは魔人領からここ、東都まで<空間転移門>で転移してきた。




「魔人の襲来だーッ!」


「早く避難しろ!」




 俺はもう魔人族が侵略に乗り出しているなんて聞いていない。


 それにしても早すぎやしないだろうか。


 俺たちが通った時には他の各国もこんな混乱してはいなかった筈だ。




「魔人はどこだ⁉」


「あっちの虹色橋のほうだが、何しに行くんだ⁉」


「魔人と戦いに行く」


「軍のお方か⁉」




 違う。俺達はただの冒険者だ。




「冒険者だ!それでは気を付けて!」




 俺とジーナとジュンジュンは虹色橋へ向かう。


 虹色橋に到着し、魔人の戦士達と、戦っている軍の人々に向かってジュンジュンが全力を出して叫ぶ。




「冒険者最大戦力、ジュンジュン=ハマサダが来たぞ!」




 軍の人々は盛り上がり、半ば崩れかけていた士気は完全に回復する。




「ジュンジュンが来たぞ!」


「疾風の勇者様だ!」


「これでもう勝ったぞ!」




 等々。


 一方、魔人族の士気はダダ下がりだ。




「いざ、決戦!」




 ジーナが更に士気を盛り上げる。


 すると怒った魔人族は攻撃を仕掛けて来る。




「焼き尽くせ!<火球連撃>!」


「光り倒せ!<雷撃感電>!」




 ジュンジュンは、風嵐剣術・十二式<風牙>の技を使って二つの魔法攻撃を打ち消し、風嵐剣術・三式<嵐風刃>でその攻撃を放った罪深き魔人族の二人を切り裂く。


 そして軍の人々は、ジュンジュンが行動する度に反応している。




「吹き荒れよ!<突風乱吹>!回り飛ばせ!<回転竜巻>!」




 魔人族はまたも魔法を発動すると、俺を狙って撃つ。




「光の拳!<聖光竜巻拳>!」




 俺は迎撃し、逆に魔人族の陣へと打ち返す。


 魔人族の竜巻と俺の竜巻が合わさった大きな竜巻は、魔人族の殆どを吹き飛ばし、呆然としている魔人族の残りはジーナが愛用の斧で斬り倒す。




 因みに、日ノ本王国軍も魔人族と同じように呆然としており、理解が追い付いていないようだった。




「せ、殲滅完了⁉」




 指揮官は殲滅完了と判断したようで、声を張り上げ殲滅終了を宣言した。




「被害状況は?」


「人的被害はゼロです!」




 凄い!




「これもサトシのおかげか」




 ジュンジュンはそう呟いた。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「くしゅん!誰かが噂してたのか?」


「風邪じゃないか?」


 そうかも知れない。早く魔王を倒して療養しなければ。

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