20話 魔王軍幹部

 俺は、ヴァンパイアと向かい合い、話をする姿勢になった。




「おっと。話をして下さるか。」


「ああ。勿論だ。」


「大体の人間どもは我を倒そうとするか、逃げ出すかなのだがな。」




 ……一人称、我なのか。


 今頃珍しい……ここは中世だからそんな事は無いか。




「俺達は魔王を倒す者だ。話も聞かないで、礼儀がなくて、どうやって魔王が倒せる。」


「我としては、礼儀でどうやって魔王様を倒すのか知りたい所であるが……。まあ話を始めよう。」




《ウザいですね……。貴方は魔王軍幹部が一人、ヴァンパイアのワレルでしょう。と言って下さい。》


 ワレル……。一人称が我だからってか?


 そのままな名前だ。




「お前は、魔王軍幹部が一人、ヴァンパイアのワレルだろう。」


「おう。良く分かったなと言いたい所だが、生憎ヒントは揃っておった。分かって当然である。」


 え?分かって当然?知らなかったんですけど。分かんなかったんですけど!




《常識外……。》


「魔王様を倒す者であれば、魔王軍幹部である我の敵である。いざ、我と勝負をするのである!」


 あ、駄目だ。こいつ奇襲かけられないパターンだ。




「何⁉倒せ!<高収束圧縮魔力弾>!」


 詠唱をし、持てる全部の技術を使った<魔力弾>を放つ。


「むむ。マオグンカやデモンヌより強い<魔力弾>であるな!<魔法障壁>!」


 だが、俺が放った全身全霊の<魔力弾>は<魔法障壁>を打ち破って進む。




「何⁉守れ!<魔法強壁>!」


 ワレルは詠唱を付けることで、<魔法強壁>の威力、効果を上げた。


 その為、<魔力弾>は<魔法強壁>に傷を付けただけで、<魔法強壁>を割る力が足りずに霧散する。




 俺は追撃として、昨日新しく作った攻撃魔法を使う。


「<炎天>!」


 一定範囲内に熱を発生させる炎属性魔法、<炎天>だ。




 <能力スキル強化>を俺が、<能力スキル強化>で強化した能力スキル、<能力創造スキルクリエイト>によって作られた魔法である。




 これはドーム状の防御、味方強化、敵弱体化効果を持つ障壁を展開させる結界系防御魔法でしか防ぐことができない。




「むむ。<結界>!」


 メジャーな魔法で来たか。


 全ての結界系魔法の素。


 範囲内に来る攻撃を無効化、範囲内の味方を強化、敵を弱体化。




「これが欲しかった!<魔法技術吸収>!」


 次は新能力。<魔法技術吸収>。


 これは、<吸収>を作ったとき、ついでに作った能力の一つだ。




 その名の通り、相手の魔法技術を吸収できる能力だ。


 <魔法技術吸収>は特殊な能力、<固有能力ユニークスキル>だ。




 俺は、<魔法技術吸収>で、<結界>の魔法技術を吸収した。


 これでワレルは<結界>を使えなくなり、俺が<結界>を使えるようになった。




「ヤバいのである。こんな時は!<変化>!」


 ワレルは急に消えた。




《違います。霧に<変化>しただけです。》


 ……ヴァンパイアだし、有り得るか。


「霧に変化か。考えたな。」


『そうである!そっちも考えたのである!』




 <変化>は、種族限定の能力の、<種族能力スキル>である、<擬態>が派生した能力スキルだ。


 <擬態>は<擬態>する物を<吸収>能力スキルを使って<吸収>しないと<擬態>出来ないが<変化>は<変化>する物を見るだけで<変化>出来るという違いがある。




「攻撃が出来ない……。どうすればいい⁉」


《リッチのマオグンカのデータがあれば……!》




《<鑑定解析>を習得しました。<同調>を習得しました。<鑑定解析>を<能力見眼>と同調します。―――成功。<鑑定解析>がLv.11になりました。過去のデータを確認できるようになりました。》


 データあった。<鑑定解析>、<過去解析>発動!




《アンデッド特攻の素材は無いでしょうか。弱点は?》


「ぐうっっ!<魔法強壁>!」


 見えなくて、敵がどこにいるか分かんないから、<結界>にしよう!




『どうしたどうした?<魔法強壁>じゃ守れないのであるぞ?』


「なら!<結界>!」


『やはりお主も使えたのであったか。』


 お主「も」ってなんだよ。お前はもう使えねーよ。




 言ったら怒られそうなので、考えるだけに留める。


「破られる……!<結界>!」




『<結界中和>!』


 <結界>が中和される……!


 そうだ!




「<魔法技術吸収>!」


 <結界中和>の魔法技術を<魔法技術吸収>で吸収すれば、ワレルは<結界中和>を使えなくなる筈だ!


『むう?<結界中和>が使えなくなったのであるな。』




「今がチャンス!<高収束聖光>!」


『聖属性の魔法であるか⁉<変化解除>!<防御結界>!』


「<魔法技術吸収>!」




 この攻撃は危険なのか、ワレルは<吸血鬼形態>に戻り、防御するが、俺は魔法技術を吸収し、<防御結界>を解除される。




「何⁉<魔法撃>!」


 捨て身の<魔法撃>だ!ヤバい!


「<魔法障壁>!」


 エリーゼが、適性のない使いこなせない魔法を使って、俺を守る。




「<魔法鉄壁>!」


 この前、<魔法強壁>が進化して習得した<魔法鉄壁>を展開する。




 と同時に、エリーゼの<魔法障壁>が割れる。


『パリィィン‼』


 とても大きな音が鳴り、破片が飛び散る。




 ワレルは減速するかと思われた。


 だがヴァンパイアであるワレルの捨て身は凄まじく、俺が張った<魔法鉄壁>も破られる。


『バリィィィィィィィィン‼‼』




 先程と比べ物にもならないようなとても大きい音が鳴り、またも障壁の破片が飛び散って、魔力でできたその障壁の破片は空気に溶け消える。


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 俺はワレルにまともに噛まれ、痛みによって、転生してから三回目の悲鳴を上げる。




 例のごとく意識を落としそうな俺は、必死に口を動かす。


 今一番言いたいことを言う為に。


「エリーゼ……。大丈夫か……。」


 俺はその答えを聞いた。




「大丈夫です。ワレルさんも消えましたし、ゆっくり休んで下さい。」


「ありがとう……。」


 そして俺は安心して意識を落とした。

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