6話 猛特訓と再会

 俺は、王宮の騎士団用訓練場で、聖騎士団の下っ端たちと訓練していた。




「ぐっ!<炎弾>!」


「おらぁ!」




 聖騎士団の下っ端、アルト=グレンさんは、訓練用の木剣で俺に斬りかかる。




「<物理障壁>!」




 俺は<物理障壁>で木剣を防ぐ。そして貸してもらった木剣で攻撃する。




 だがアルトさんは木剣でそれを防ぐと、反撃に移り、もう一度俺に斬りかかる。俺は防御が間に合わず、木剣を諸に食らうと、その場に「バサッ」と音を立てて倒れる。




「ぐう……。」




 やはり下っ端とは言え聖騎士は強い。俺は次の訓練に移った。




 ……次の訓練。




 素振り、素振り、素振り、素振り、素振り、素振り、素振り、素振り、素振り、素振り。


 ……つまりずっと素振り。




「1008、1009、1010、1011、1012……」


「よーし。いいぞ!筋力は力の源だ!」




 こんな事を言っているのは、脳筋のキンニ=フォン=クマンだ。名前まで脳筋である。


 後で筋トレとかやらされそうだ。




「あんまり扱くなよー。」


「は、はい!アリア副団長!」




 こうキンニさんに注意したのはアリア=アルド副団長だ。彼も平民らしい。




 課題の素振り1500回を終えて、俺は次の訓練に移った。




 ……次の訓練。




 素振り・筋トレを終えた俺は、魔法訓練に移った。




 教えてくれるのは魔法戦士団の皆さんだ。




「先ずは魔力循環訓練だ。」




 最初に魔法戦士団戦士団長のアルフレッド=マジシャルさんの<魔力>についての講義を新入生と一緒に受けてから訓練を行う。




「<魔力>は皆知っているだろう。まず、<魔力>は体内を循環する時、少しずつ空気中に抜けていく。すると勿論、体内を循環する<魔力量>は少なくなる。普段、<魔力>は減った分だけ空気中の<魔力元素>を<魔力>に変換して取り入れられるが魔法を使うと釣り合いが取れなくなり、体内の<生命力>までもを<魔力>に変換してしまう。すると寿命が縮む。つまり早死にとなる。それは嫌だろう。だから……。」




 ……次の訓練。




「できるだけ魔法を連発したら使える魔力量もかなり多くなるぞ!」


 魔法を連発し、限界魔力量を高める。




「はあ、はあ、はあ。」


「おいエルマス副戦士団長。くたばるな。妹に凄い魔法を見せるのではないのか!」




 エルマス=フォン=ソーシャ副戦士団長が倒れかけている。そういう俺もかなりピンチだ。




「そろそろ……休憩に……したら、いいと……思います……。」


 こう声をかけたのはロゼリア=バヨネッタさんだ。もう殆ど倒れている。




「ああ、そうしよう。」


 良かったー!




 ……休憩。




 あれだけやって倒れたり魔法が使えなくなったりしないアルフレッド戦士団長は凄いと思う。




『ピーンポーン』


 玄関のほうでチャイムが鳴った。


 この世界にもチャイムってあるのか。意外と科学も発展しているのかもね。


《魔道具です。》


 魔道具かい!




『私です。』


 この声、聴いたことあるような……。


《あります。》




「おお。エリーゼか。エルマス副戦士団長!エリーゼが来たぞ!」




 それを聞いたエルマス副戦士団長は玄関に向かった。




『お弁当です。今日は昼も跨ぐって言っていましたよね。』


「ありがとう。取り敢えず入ってくれ。」


『ガチャ。』




 エルマス副戦士団長はドアを開けた。




「お邪魔します。」


「知らない人もいるだろう、紹介しよう。」




 アルフレッド戦士団長が紹介してくれるようだ。




「皆、この子はエルマス副戦士団長の妹のエリーゼだ。」


「はい、エリーゼ=フォン=ソーシャです。いつも兄が忘れ物をするのでたまに来ると思います。よろしくお願いします。」




 まさかのあの時助けた女の子でした。エルったら、知っていたなら教えてくれたらいいのに。


《サトシ陛下の恋なので。》


 そんなっ!


《くっくっくっくっく……。》


 笑いが黒い!




「あれ……貴方は……。」


「ん?どうしたエリーゼ。」




 エルマス副戦士団長が問う。




「貴方、この前助けてくれた魔法使いの方では⁉」


 魔法使いって。そんなイメージなのか。そこまで強くはないけど。




「ああ、そうだよ。」


「名前!名前は何というのですか⁉」




 おお、そうだ忘れていた。




「中村サトシだ。」


「サトシさんですね!」


「ああ、そうだよ。」


「これから宜しくお願いします!」


「ああ、宜しく。」




 もしやフラグ⁉結婚フラグ⁉


《違います。》




 じゃあ……、


《いいえ、振りではありません。》




 心を読まれている⁉


《はい、心を読んでいます。》




「それで……。」


「それで?」


「いつ、会えますか⁉」


「うーん。三月二十日か、二十一日か、二十二日か、二十三日か……。入学式までずっと暇を持て余しているな。ただ、二十四日は訓練が昼をまたぐから……。」


「エリーゼさんが訓練場に来たらいいじゃないですかね。」


 そう提案したのは平戦士団員のクノール=サンキュベリさんだ。




「あ……そうっすね。」




 ということで、エリーゼは毎日訓練場に来るということに決定した。が、エルマス副戦士団長は猛反対している。


「家の妹はお前にはやらん!」


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