一話 生活

 俺の名前は、中村サトシだ。


 25歳の男性(口調で分かっていたと思うが念のため)で、職業は世間で有名な研究所、論理館という薬品から機械から食品やら何でもありの研究所で人の皮を被った豚……博士の世話係……マネージャーをやっている。


 というと聞こえはいいが、要するに雑用係、パシリをやっている。


 ああ、豚……博士からはやらせていただいているって言えって言われていたな。なんか扱いが奴隷っぽい……超ブラック研究所の豚……博士なのである。


 さらに、独身で彼女もいない俗に言う「人生負け組」だ。


 今日は土曜日で、天気もいいから(土曜日だろうが日曜日だろうが天気が良かろうが悪かろうが24時間365日年中無休、泊まり込みで雑用・家事をさせられるけど)久しぶりに研究所の外で執筆活動、現実逃避に励んでいる。


 ……自分で言っていて悲しくなってきた。知識を得るために友人の、たった数個の俺の救いの内の二人、博士賢治と剣山剣人に誘われて研究所で仕事を始めた訳だが完全に予想していなかった。やめられない理由がある。


 今更仕事なんてないし……。いい年をして(25歳)仕事なんてないし……。

 つまり殆どの理由が「仕事なんてないから」である。人生負け組とはいえ俺の魔法で苦にもならないし……。


 今、「聞き捨てならないことが聞こえたぞ⁉魔法⁉」とか思った人もいるだろう。詳しく説明する。


 まず、<魔法>とは、<魔力>と<魔法陣>と<詠唱>を組み合わせる事で<魔力>を想像の通りに実体化させた物……と賢治が予想していた。


 賢治はその名の通り、物凄く膨大な量の知識を頭に入れており、RPGなどファンタジーの知識にも詳しい……らしい。


 そして<魔法>に必要な最低限の<魔力>に<魔力>を後付けする事で<魔法>の効果を高めるらしい。<魔法>のアップデートと考えていいだろう。


 更に<魔法陣>だが、これは<魔法>を発動する時に勝手に出てくるようなゲーム等の感じではなく、<魔法>の発動条件自体に<魔法陣>の存在というのがあり、<魔法陣>がないと<魔法>が放てない。あと、<魔法陣>が大きければ大きい程<魔法>の効果が上がる。


 次、<詠唱>だ。これも<魔法陣>と同じような感じだ。<詠唱>がなければ<魔法>が発動できない。<詠唱>が長ければ長い程<魔法>の効果も上がる。これはゲームにもよくありそうだ。


 因みに仕事が苦にならない理由となっている魔法は、<身体強化><疲労回復>である。


 最近はまっている魔法は<能力見眼>だ。人の能力値、つまり賢治が言う<ステータス>を見られる魔法だ。


 折角だから俺のステータス。


苗字:中村 名前:サトシ 性別:男 Lv.:3 精神Lv.100 天職:魔法使い

目標職:大賢者 年齢:25歳

攻撃:55 防御:55 速度:60 魔力:240 筋力:140

能力(スキル):小賢者<無属性適性、全属性適性、魔道具作製、魔法展開速度強化、魔法強化>、想像者<魔法創造、能力強化、発想強化>、成長<成長効率、成長速度強化、成長促進>、家事、補助者

魔法:<身体強化Lv.89><回復><疲労回復Lv.99><魔法障壁><基本属性魔法(火、水、電、風、土)><特殊属性魔法(聖、魔、氷、精霊(使用不可)、妖精(使用不可)><能力見眼Lv.2>

付与効果:魂保護、死亡強化


《<能力見眼>のレベルが2になりました。》


 ……なんか聞こえた。なにこれ。


《能力、<補助者>の効果です。》


 なんか強そう。無表記=Lv.1らしい。精霊魔法と妖精魔法は使用不可だった。精霊も妖精もこの世界にはいないようだ。別の世界?いるだろうね。


 という訳で至極普通な一般人の成人男性と比べてみた。


(個人情報省略)Lv.4 精神Lv.100

攻撃:85 防御:70 速度:90 魔力:0.01 筋力:100

能力(スキル):家事<自炊Lv.100、掃除Lv.30、洗濯Lv.21>書類仕事Lv.100


 <自炊>と<書類仕事>、<精神レベル>がレベルカンスト……。お前も頑張ろう……。


 そして友人たちのステータスである。


苗字:博士 名前:賢治 性別:男 Lv.3 精神Lv.98 天職:知識人

目標職:稀代の天才 年齢:25歳

攻撃:50 防御:55 速度:70 魔力:130 筋力:90

能力(スキル):成長<成長効率、成長速度強化、成長促進、進化速度強化>、知識人<記憶容量拡大Lv.96、計算速度強化Lv.100 派生=高速計算Lv.100 派生=超高速計算Lv.100派生=正確計算Lv.100 派生=超正確計算Lv.99、言語能力Lv.100 派生=言語理解Lv.23知識Lv.100 派生=知恵Lv.94>、家事<自炊Lv.100 派生=料理Lv.100 派生=絶品料理Lv.100 派生=神域料理ex+、掃除Lv.100 派生=大掃除Lv.100 派生=清掃Lv.100 大清掃Lv.100 進化=効率清掃Lv.100 進化=超効率清掃ex+ 派生=高速清掃Lv.100 派生=超高速清掃ex+、洗濯Lv.67>


 賢治無双。能力は賢治の方が高いのか?まあ実際そうだけど凹んだ。


苗字:剣山 名前:剣人 性別:男 Lv.43 精神Lv.100 天職:剣士

目標職:大勇者 年齢:25歳

攻撃:100 防御:95 速度:140 魔力:40 筋力:355

能力(スキル):小勇者<剣術Lv.58、小槍術、小盾術、小棒術、小拳術、小弓術>、家事<自炊Lv.100 派生=料理Lv.85、掃除Lv.100 派生=大掃除Lv.100 派生=清掃Lv.100 派生=大清掃Lv.100、洗濯Lv.100 派生=高速洗濯Lv.100 派生=強力洗濯Lv.100 派生=超精度強力高速洗濯ex+>


 剣人は剣道をやっているから剣術だけ「小」が付いていない。


 <防音障壁>をかけて集中していた思考から<防音障壁>を外し、現実へ帰還すると、悲鳴が聞こえた。


「きゃーっ!」

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