厨二の世界で大冒険!
ナナシリア
プロローグ
金属でできた壁。薄暗い地下道だ。二人の男が話をしている。
「邪神王様、例の<異世界勇者>計画、大丈夫でしょうか。」
一人目の男が言う。
「大丈夫だと思う。彼は<成長速度強化>と<成長促進>を持っている。それに彼以外にも優秀な<異世界勇者>もいる。<最強の漆黒騎士ブラッディ・ナイト>、<最強の聖騎士ホーリー・ナイト>。それにこっちにも<勇者>はいるし、私の<魂保護>が簡単に破られるとは思えない。」
邪神王と呼ばれた男が答える。
「……よく考えたらそうですね、邪神王様。」
「それに、<魂保護>の特別効果で死ぬ度に強くなるようになっている。」
「……」
「あと、」と邪神王が続ける。
「はい、あと?」
「いつも言っているが、私のことはギリギリスと神名で呼んでくれ。邪神王は称号だ。先代も、先々代も邪神王だった。」
神名とは、神々が活動するとき使う名前である。本名とは別の名前だ。拝まれる時などに使われる。
もう一人の男は、邪神48柱、ギラダイナ<人間形態>だ。ちなみに邪神王も<人間形態>である。
ギラダイナは内心で、「面倒くさいな」と思う。だが、立場的には邪神王の方が上だ。従わない訳にもいかない。まあ邪神業界では出世は実力第一だから出世には関係しないが。
実力至上主義の邪神業界で身分がギラダイナより高いということはギラダイナよりも強いということだ。さすがに温厚で有名な邪神王はいきなりギラダイナを攻撃したりしないが、他の邪神だったらこのミスで命を失っていてもおかしくない。
「あと、」
ギラダイナはまた、「面倒くさい」と思う。まだあるのか。同時に、「過保護な邪神王だ。」とも思った。
「<伝説級>の武器、<賢者の杖>が<勇者>……サトシの手に渡るようになっている。絶対に大丈夫だ。」
「<賢者の杖>があるならば大丈夫ですね。」恒例の内心公開コーナー。内心は「<賢者の杖>なんて貴重品、勇者に持たせるなよ。」だ。
ここで、装備品の<レアリティ階級度数>について軽く説明する。<レアリティ階級度数>とは簡単に言えばレア度や性能を数値化し、階級付けて表したものだ。
<神話級><神具級><伝説級><古代級><上位級><強力級><希少級><上級><一般級><初級><粗悪級><最悪級>
があるのだが、早く言った方が武器としての性能は高く、腕のある職人が作ったということになる。まあ、この杖の製作者は<賢者>であるが。
「というか<賢者>がいるパーティでも<魔王>にすら勝てなかったのにたかが邪神王の強化と加護が付けられた<異世界勇者>と数人のパーティメンバーだけで<神>特3柱……ダークネス率いる<ダークネス協会>に勝とうとか、邪神王は絶対に頭が腐っているよな。マジでヤバイよなwww」
「ん?誰の頭が腐っていると?」
さすがの邪神王も頭が腐っている呼ばわりされたら怒るだろう。そこで恒例の内心公開コーナー第四弾だ。内心は、「口に出していたのか!?」
そしてギラダイナは逃げ出した。金属でできた地下通路だ。金属の壁に隠れられれば逃げ切れるだろうと考えたギラダイナ。直ぐに隠れることを実行する。
だが邪神王は金属の壁をワンパンで壊し、魔法<雷槍>でとどめを刺す。
ギラダイナは全身に槍を刺されて死んだ。邪神王はそのギラダイナの死体を一瞥しただけで……いや、実際には一瞥もしていないかもしれないが、とにかく「もうお前に用はない」と暗に言うように踵を返して歩いて行った。
その為、邪神王は自身が撃った<雷槍>が消えずに<古代級>の武器、<雷槍“義理”>として残ったということに気が付かなかった。
その<雷槍“義理”>は話に出ていた<異世界勇者>とは別の<異世界勇者>に拾われて<勇者の雷槍>として魔王退治に大活躍するのは別の話なのでここでは割愛する。
例え、その<雷槍>に<100代目邪神王の魔法>という称号がついていてのだとしても別の話だ。
例え、<100代目邪神王の魔法>であるから故の活躍だったとしても別の話だ。
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