第2話

なんでって、俺はある、トラウマを抱えていた。


女性恐怖症。


発症したのは一年前のバレンタイン。


俺は学年一可愛い女の子に体育館裏に呼び出されて、


「はい、コレ。手作りチョコ。

頑張って作ったの。山吹くんに食べてほしいな」


頬を赤らめてそう言われて、

俺は舞い上がった。


可愛い女子、それも俺が大好きな女の子からの手作りチョコに、有頂天になっていた。


帰宅後、

喜び勇んで、部屋で包み紙を開けて

チョコをかじった。


するとどうだろう...。


現実はチョコほど甘くなかった。


おおよそ、食べ物ではない感触が口の中を支配した。


大慌て、洗面所に行き、汚いが

食べかけのチョコを思い切り吐き出した。



チョコには、

小さな釘が何本も入れられていた。


「嘘だろ....」


ショックを隠せなかった。

鈍器で頭を殴られたような感じだった。



足は部屋の床についているけど、

床に一気に亀裂が走って、俺は真っ逆さまに

奈落の底に突き落とされてしまう感覚に襲われた。


翌日、登校したらチョコをくれた俺の想い人が下駄箱で腕を組んで俺のこと待ち伏せしてた。


「山吹くん、おっはよー。昨日はごめんねぇ!チョコ食べて怪我しなかった?」

と笑いながら聞いてきたときは

絶句した。


答える気力もなく、靴を取り出してから

暫くの間、ぼけーっと突っ立っていたら、

冷たくこう言われた。


「勘違いしないでよ!罰ゲームだから。

陰キャに異物混入のチョコをあげて

嘘の告白する」って友達の命令に従った

だけだからね!」


「そっか...」


大好きな女子が。

大嫌いな女子になり変わった瞬間だった。


これが契機だった。


気が付けば、女性恐怖症に陥っていた。


女が怖い。


ニコニコした笑顔の裏に、底知れぬ

狂気を宿してるんじゃないか...



そんな色眼鏡で見てしまって、

俺は好き、の対象を三次元から二次元に

切り替えていた。



俺の部屋に大人向け雑誌が見当たらないのも、

アニメのポスターだらけなのも、全てはトラウマが原因だった。




ハル 金髪ギャル

ナツ 俺の妹

アキ ショートカットな巨乳女の子

冬子とうこ. 清楚系美女



それから、少しして。

四人が更に、この部屋が暑いだとか

言い出して一枚ずつ服を脱ぎ出したんだ。


「ちょ、なにやりだすの!?」


「生身の女に興味があんのか!?

ふつーの男みたく、三次元のオンナを見て興奮すんのかってゆーのを、チェックしてあげる!

実はね、ナツから相談受けてたの!

うちのお兄ちゃん、ちょっと三次元にも興味出させてあげたいの!?どーしたらいいかな??」って!」


「だから、私達が、友達のよしみで一肌脱いで、興味、持たせてあげよーじゃないの!」



気付いたときには。

ハルはキャミソール姿になり。

ナツも負けじとタンクトップすがたになり。

アキはチビTシャツになって、

おヘソとくびれをアピッてきた。

トウコは、モジモジと、ロンT姿が限界で、下はなんとか、

ロングスカートを頑張ってたくし上げて太腿を

モロに見せてきた。


「ど、どうでしょう?」とトウコが

俺に上目遣い。


オンナの上目遣いは。

俺にとって、一撃必殺の力があった。


「なによ、ふつーの男みたく

オンナの身体見て、照れたりできんのね!?」


「少し安心したわ」

と妹 ナツ。




「バレンタインも近いことだし、彼女作ればいいんじゃない??」


なんだかんだで、ナッは俺のこと心配してくれているようだった。





「四人のなかで誰がいい??」


ハルが俺に尋ねた。


俺は取り敢えず。


「全員、薄着をやめてくれ!!

それから考えるから!」と

顔を真っ赤にして返答から逃げ、

「暑いならアイス買ってきてやるよ!」とひとまず部屋から逃げたんだ。


「マジ!?やったあ!」

ハルとナツ、そして、アキのよろこぶ声が背中に聞こえて。

俺はドアを閉めた。


向かう先は家近くのコンビニ。


「ったく、俺の家なのに、なんで

逃げなきゃなんねーんだよ!


ぶつくさいいながらも。


生身のオンナもやっぱし悪くないな...

と思い始めていたのでした。


そんなことを思ってたら。

ナツがバタバタと俺のあとを追っかけてきた。



「あのね、私が

一番、お兄ちゃんのこと好きなんだからね!

パパが再婚したときからずっと、お兄ちゃんのこと好きなんだから!

他の三人みたいに、にわかじゃ、ないんだから!そこんところ、解ってよね!」



「お、おう...」


俺は外へと出た。


そして、こんな台詞を呟いた。


「俺の義妹がこんなに可愛いわけがねぇ...」って。

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