第67話
カフェへと向かう道中は、俺、ヒイロさん、ユウシさん、ビデオさん、アヤカさん、マドカさん、ミキ先輩、ヒイロさんの彼女さんが4人、みんなのマネジャーが6人、の計17人になった。
結構な大人数なので入れるか心配したが、アヤカさんのマネジャーさんが先にお店に連絡を入れていて席を押さえているので大丈夫とのこと。
ただ移動時はどうしても目立つ。
見られてるなぁ……
まあ、そんなことを気にしているのは俺と……先輩と、ヒイロさんの彼女さん4人くらいのものなんだけどね。
「ミキさん。今から行くカフェは個室になっているから大丈夫だよ。
ここでは基本的に他所で撮影している芸能関係者には会わないように配慮されているんだよ」
俺たちの知らないことを教えてくれる親切なヒイロさん。ヒイロさんの彼女さんたちはちょっと残念そうにしている。もしかしたら他の芸能人に会えると期待していたのかも。
ん?
今先輩の肩に触れようとして避けられていたように見えたけど……先輩が俺の方にちょっと近づいてきただけか。先輩は男性が苦手だからヒイロさんのこともまだ苦手なのだろう。
俺たちよりも前から撮影しているから、ヒイロさんがここ(東西映像特撮スタジオ)のことについて詳しいことが分かった。
あれ、おかしいな今睨まれた気がする……
「うわぁ」
そんな声を上げるのはヒイロさんの彼女さんたち。俺も思わず上げそうになった。
カフェって聞いていたけど入り口からしてかなり高級そうな感じのするカフェだ。値段もきっとそれなりに高いのだろう。
不安になりマキさんの方を見れば大丈夫だと頷いてくれてちょっと安心する。
アヤカさんのマネジャーが先に入り話をつけて、みんなにも入ってくるように促させられた。
礼儀正しい店員さんに案内されて個室まで案内してもらうが高級そうなカフェなだけに分厚い絨毯の廊下を歩く。
——おお。
ふかふかだ。それだけでも俺が1人だったら絶対に入らないようなカフェだと思う。
案内された部屋には窓から綺麗な景色が眺められるような雰囲気のいい部屋。
アンティークっぽい品のある丸テーブルが三つあり、それぞれに座り心地が良さそうな椅子が6脚ずつ設置してある。
「とりあえず適当なところに座りましょか」
アヤカさんはそう言うが、普通に考えたら丸テーブルの一つがマネジャーさん6人の席になり、ヒイロさんとヒイロさんの彼女さん4人で5人の席に。あとは俺たち6人で座れば問題ないはずだよね。
でも、ヒイロさんがそれは同じ撮影仲間としてどうなんだい、と嫌がって首を縦に振らない。
ヒイロさんの彼女さんたちは不安そう。ヒイロさんはもうちょっと彼女さんたちのこと見てあげた方がいいと思うけど……俺(サキたちと)だったら真っ先に俺はそっちの席に座るけどな……
「はぁ、仕方ないからヒイロはこっちでいいけど、彼女さんたちには後でフォローしなさいよ」
「当然だろ」
そう言って俺の左隣の席に座り椅子をこちらに詰めてくるアヤカさん。まあ6席を7席にするから詰めるのは分かるけど、マドカさんがなんでかなちょっと悔しそうな顔をしていた。でもすぐにアヤカさんの隣の席に座ったから仲はいいのだろう。
右隣には先輩が座るが、その先輩の隣にはヒイロさんがすぐに座った。でもその瞬間、先輩が気持ち俺の方に椅子を寄せてきた。ごめんねって顔をして。大丈夫、俺は分かってるし(男性が苦手なこと)、ヒイロさんは気づいてないようだから。小さく親指を立てておけば先輩がホッとしていたように見えた。
「俺、ちょっとお腹が空いているからパスタセットにするよ」
「周りのことなんて気にせず、ヤマトくんは好きなの食べていいんだからね」
アヤカさんがそう言ってくれるのは、お昼はスタッフさんが準備してくれていたお弁当を食べたが、最近よく動くからお腹が空く。なので俺は量の多そうなパスタ(ペペロンチーノとパンとコーヒー)セットを頼んだが、ほとんどのメンバーはデザートとコーヒーもしくはデザートとソフトドリンクを頼んでいたからだ。
ヒイロさんやユウシさんがここでそんなに食うの? って顔をしていたけど、ヒデオさんは逆にうれしそう。そっかヒデオさんはミートパスタ大盛りだったね。でもヒデオさん大丈夫かなミートパスタはタレが飛ぶよ。
「ヤマトくんのソロパートすごかったね」
みんなでわいわい撮影のことで盛り上がっていると、アヤカさんが不意に先ほど撮影したダンスミュージックについて触れてきた。
「ああ……あれは」
そうなのだ。もともと俺のソロパートなんてなかったんだけど、前回の撮影で俺には無茶振りが可能だと知った監督が悪戯を思いついたような笑顔を突然浮かべると、ヤマトくんソロでちょっとやってみようかと言ってきたのだ。
画面外からまるでパルクールのサイドフリップみたいな宙返りで画面中央まで入りすぐにダンスに入る。のりのりでみんなと同じステップダンスをした後にバク転を最後に決める。監督は満足そうに出来上がりを楽しみしといてね、と言っていたけど、どこに挿入されるかは教えてくれなかった。たぶん曲の2番か3番あたりのどこかかな……
「僕もあれくらい練習すれば……」
ヒイロさんが隣の先輩に何か言いかけたところで、料理が運ばれてきた。
「わぁ」
女性陣から歓喜の声が上がる。デザートも結構な量に見えるが盛り付け方がすごい。すごくオシャレだ。
どんどん料理が運ばれてきて俺のパスタセットも来た。いい匂い、すごく美味しそう。
ん?
でも一つ気になることが、ヒイロさんの彼女さんたちのテーブルには何も運ばれてきていない。ヒイロさんを見るがヒイロさんはホットコーヒーを優雅に飲みながら隣の先輩に先ほどの続きを語っている。
しかも、よく見れば彼女さんたちは涙目だ。もしかして何も頼んでいないの? 慌てて料理を運んできた店員さんに小声で尋ねてみれば、注文は預かっていないと言う。ここって関係者しか入れないお店だからヒイロさんが頼んであげないと注文できないようだ。関係者カード見せないといけないし。
幸いみんなは運ばれてきた料理やデザートに夢中でこちらに気づいていない。
——今なら……
「ヒイロさん」
ヒイロさんに小声で声をかけるが、先輩と話しているから……いや、おかしい。聴こえていないはずないのに。先輩でさえ俺の方をちらりと見てくれた。さて、どうしようか、もういっそのこと俺が頼んであげようかなどと考えていると、
「ヤマトくんどうしたの?」
隣のアヤカさんから声をかけられたので、アヤカさんの耳元まで顔を寄せて小声で事情を話す。ヒイロさんの失態をみんなに広めてもいいことはないと思ったからだ。
「は、はぃ」
アヤカさんが代わりに、まだ部屋で待機してくれていた店員さん(気が効く店員さん)に上手く声をかけてくれて彼女さんたちからも注文を取るように頼んでくれた。
俺も店員さんに頭を下げる。そのアヤカさんの顔は真っ赤だったけど。もしかして慣れないことをさせてしまったのかもしれないとちょっと後悔。たしかアヤカさんってお嬢様だったっけ? 上品だし。俺が頼むべきだったと思いつつアヤカさんにはちゃんとお礼を伝えた。
「い、いいのよ。気にしないで」
ま、その後、何事かとマドカさんから尋ねられていたアヤカさん、どう言ったかは知らないけど、ヒイロさん、2人から睨まれていたよ。
そのヒイロさんは気づいていなかったけど。さすがに今回はヒイロさんが悪いので俺は知らない。
帰り際、彼女さんたちアヤカさんにお礼を言っていたね。そのあと何故か俺にも頭を下げてきた。アヤカさんが何か言ったのかな?
ただ帰りの車の中で、先輩がかなり機嫌が悪くてびっくり。ヒイロさんの相手がキツかったとか。助けてほしかったとか。ごめんさない先輩。普通に会話をしていたように見えたから気づかなかったよ。今度食事を奢ることで機嫌を直してもらった。
マキさんは他のマネジャーさんから色々なノウハウを聞けて満足そうだった。
※更新遅くなりました。すみませんm(__)m
ヤマトから見た呼び方をのせてみました。
●柊木健タケル
主人公の父36歳
呼び方:父さん
●柊木咲夜サクヤ
主人公実母36歳
呼び方:母さん
●柊木麗子レイコ
ヤマトの義母36歳
呼び方:レイコ義母さん
●柊木恵メグミ
ヤマトの義母36歳
呼び方:メグミ義母さん
●柊木香奈子カナコ
ヤマト義母36歳
呼び方:カナコ義母さん
●弟、4歳 すでに彼女がいる。
春人(母、咲夜)呼び方:ハルト
夏人(母、麗子)呼び方:ナツト
秋人(母、恵)呼び方:アキト
冬人(母、香奈子)呼び方:フユト
●妹、2歳 主婦をしている恵と香奈子にべったり。
雪子(母、咲夜)呼び方:ユキ
月子(母、麗子)呼び方:ツキ
風子(母、恵)呼び方:フウ
花子(母、香奈子)呼び方:ハナ
【鈴木家】
●鈴木守マモル 銀行員
サキ、アカリ、ナツミの義理の父36歳
呼び方:マモルさん
●鈴木彩月サツキ サキの実母36歳
呼び方:サツキさん
●鈴木つかさツサカ アカリの実母36歳
呼び方:ツカサさん
●鈴木薫カオル ナツミとミオの実母36歳
呼び方:カオルさん
●☆鈴木(橘)咲希サキ 16歳
高1 ヤマトの彼女
呼び方:サキ
●☆鈴木(田中)朱里アカリ 16歳
高1 ヤマトの彼女
呼び方:アカリ
●☆鈴木 夏美ナツミ 16歳
高1ヤマトの彼女
呼び方:ナツミ
●鈴木美緒ミオ 15歳 中3
ナツミの妹
呼び方:ミオちゃん
【学園】
●☆霧島 亜紀 アキ 16歳
高1ヤマトの彼女 学級委員長
呼び方:アキ
●☆川崎 美幸 ミユキ16歳
高1ヤマトの彼女 アキの親友
呼び方:ミユキ
●☆西園寺(藤堂)晶アキラ 16歳
ヤマトの幼馴染高1 ゲーム仲間
ヤマトの彼女
呼び方:アキラ
●黒木美紀 18歳
ヒロインの一人。まだ彼女ではない。高三
リアライズ芸能事務所 芸名 ミキ
ヤマトと同じくグレイドのモデルの一人。
呼び方:先輩
【グレイド】
●一木さん、スタイリスト
ヤマトのファンの一人
呼び方:一木さん
●双葉部長 ヤマトのファン
呼び方:双葉部長
【リアライズ芸能】
●桂木さん グレイドから派遣された
黒木真紀の先輩 ヤマトのファン
呼び方:桂木さん
●栗田さん グレイドから派遣された
ヤマトのファン
呼び方:栗田さん
●小倉さん
ヤマトのファン
呼び方:小倉さん
●黒木真紀さん、スタイリスト兼マネジャー
過去の出来事によりスタイリスト男嫌いだがヤマトは別。
妹のミキが大好き。
呼び方:マキさん
●大國翼先生 講師の一人。
元有名な歌劇団所属。
呼び方:ツバサ先生
【仕事先】
●赤井緋色ヒイロ 高校2年 17歳
爽やかイケメン腹黒ゲス
有名芸能事務所
アースレンジャーのレッドアースであるリョウ役
ゴッディスボーイ優勝者でモデルもしている
呼び方:ヒイロさん
●青木 英雄ビデオ 高校2年 17歳
日本人離れした堀の深いイケメン
有名芸能事務所
アースレンジャーのブルーアースであるショウヤ役
ゴッディスボーイの準優勝者
呼び方:ヒデオさん
●緑野 勇士ユウシ 大学生 20歳
知的なイケメン
大手芸能事務所
アースレンジャーのグリーンアースであるリク役
呼び方:ユウシさん
●黄理谷 円香マドカ 高校3年 18歳
元気で可愛らしい
大手芸能事務所
アースレンジャーのイエローアースであるマイ役
呼び方:マドカさん
●桃川 彩香アヤカ 16歳
我がまま 大物女優、桃川菊子の娘
大手芸能事務所
アースレンジャーのピンクアースであるルカ役
呼び方:アヤカさん
●北条さん、メイン監督
●泉さん、絵コンテライター
●遠藤さん五十代ダンディーの大物俳優
など……
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