弱い私の反逆撃 4
あ、そ、そうか……。
彼女たちが帰ったということは、つまり彼らが“切り札”として考えていた『魔法を使える人間』が国内から消えたということ。
また人間の国から攫ってこようものなら、次はないはず。
なにせ魔法を使えるのは人間の国の王侯貴族のみ……。
たやすく攫えるものではありませんよね。
それを厳選して貴族の身寄りのないおばあさん——おそらく誰も探さないと思ったのでしょう——を誘拐してきて召喚に利用した……。
けれど、人間の国も“利用価値”は十分に理解しているはずですものね。
「なるほど、だいたい理解しましたわ。ですが、それですとエルフどもは姫様を手に入れても国際的に立場はないのではありませんの?」
「ああ、関係ないのよ〜。おそらくエルフの狙いは二つ」
「二つ?」
え、すごいです喜葉様。
私は一生懸命考えてようやくわかったことなのに、もう理解しておられる……!
これが教養の差……!!
あ、感心している場合ではありません。
お妃様の言う“エルフの目的”をしっかり聞いておかなければ!
多分、まず間違いなく、私無関係ではないですよね。
「一つ目はリセ様を手に入れて、ティムファーファ様に取り入る——あるいはティムファーファ様を、リセ様を人質に操る、またはエルフに再び魔法を使えるようにさせたりと、まあ、リサ様を手に入れるだけで存外使い道が多いということね〜。そのあと“自分たちは攻撃された”と言い張って世界中に喧嘩を売る、とか」
無関係どころか私が地雷そのもの〜〜〜〜。
「二つ目はリセ様を手に入れたあと鎖国すること。完全に閉じこもり、そのあとじっくりリセ様とティムファーファ様を懐柔するなり脅して魔法を解禁させるなりするつもりなんじゃないかしら。わらわとしてはこちらの可能性の方が高いと思うわ〜」
「引きこもっちゃうんですか?」
「元々エルフ族って他の種族と親交するの大嫌いなのよね〜。『なんで誇り高き我らがお前らのような劣等種と話をしなければならない』的な感じで、とにかく見下していたい種族だから。なんなのかしらね、あれ〜」
あ、う、うーん……否定する要素が、ありませんね。
というか、私がエルフたちの手に落ちるのは前提であり、その後エルフたちが世界に戦争を仕掛けるか、『森人国』に鎖国して引きこもるかの違いしかないという。
私とティムファーファ様がエルフたちにとって計画の肝心要ではないですか!
吐きそうですね!
「母上、それは実質リセが計画の中心ではないか」
「苦労して異世界から連れてきた他の子たちが帰っちゃったんだもの、無理もないわ〜。そして多分、エルフたちがティムファーファ様の存在を知ったのもその子たちが帰る時じゃないかしら〜。自分たちが人間の国から必死に攫ってきて、ようやく手に入れた『魔法を使える人間たち』を、あっさり元の世界に帰してしまえるのは——」
『うむ! ミーのような“原初の精霊”だけナリなー!』
ティムファーファ様……そんな軽く……。
『エルフどもはよほど追い詰められているということか』
「はい、始祖様。その通りですわ。……だからこそ、奴らは死に物狂いでリセ様を手に入れようとするでしょう。わらわたちももちろんリセ様のことを最優先に守りますが、エルフたちは精霊たちより魔法を奪われなくなって以降、独自の技法で様々なことができるようになっていると聞きます。それは——わらわたち竜人族の、式神のような力」
『うむ……』
「……呪術、ですね」
「ええ、さすがに知ってたわね」
お妃様の言葉に頷く。
エルフたちは、精霊が呼びかけに応えなくなってからも必死に魔法を取り戻そうとしていました。
彼らの体には独自にマナを吸収して、魔力を作り出すことが可能といいます。
しかし、マナは非常に毒素が強く、マナの毒素をも分解して魔力に変換することができるのは魔族だけだそうです。
つまり、竜人族でさえマナから魔力を生成するのにはそれなりの危険が伴う……ということ。
竜人族よりも体の弱いエルフでは、致命的なのではないでしょうか。
それでも魔法に執着していたエルフたちは、複数人が少量の魔力を作り出すことで、それを合わせて使う魔法とはやや異なる力——呪術を完成させたそうです。
しかし、それは本当に微々たる力であり、多くのエルフが数人がかりで数日かけて生成したマナを使って使う術。
燃費が悪いにもほどがあるのですが、彼らにとっては自分たちが唯一使える魔法に準じるものなので、誇りに思ってるみたいでした。
そしてその名称——呪術とは、エルフたちにとって生命を脅かす故にそう呼ばれていると聞きます。
私には、彼らの呪いのような執念が魔法の真似事として『呪術』担ったようにしか思えません。
まさしく怨念めいたものを感じますよね。
「呪術は魔法ほどの力はないと思うけれど、用途にたぞが多すぎるのよね〜。発動条件も厳しいから、エルフたちにとっても道半ば、という感じだし」
「そうですね……。でも……危険なものであることには、間違いないですよね」
「ええ」
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