弱い私の反逆撃 3
『けど、その四人の少女たちはミーがリセにお願いされて、元の世界に還したナリよ』
「え!」
ぽりぽり金平糖をかじりながら、ティムファーファ様がさらりと教えてくださいました。
あの子たち……彼女たち。
元の世界に、還った……!?
『ミー、リセにお願いされてエルフの国に行ったナリ。歳若い人間の女の子が四人。話しかけたらすぐ、この世界に召喚されたって教えてくれたナリ。そんで、リセに頼まれてユーたちを元の世界に還そうと思ってるって話したら——』
彼女たちは、三対一に対立したらしいです。
一人だけ、元の世界に帰らず、この世界に留まりたいと言い出した少女は……最初に私を突き飛ばしたり罵ったりし始めた子でした。
けれど、もっと前——私が精霊と契約できないとわかった時、エルフたちに捨てられそうになった私を庇ってくれた女の子がその子を嗜めてくれたのだといいます。
残りの二人も、その子の側についた……。
三対一では、彼女も武が悪い。
彼女は元の世界で両親の中が悪く、離婚の話し合いが進んでいたみたいですが……それでも三人に説得されて還る決断を下したのですね。
彼女たちはティムファーファ様の提案を受け入れ、精霊と契約を解除し、元の世界へと帰っていった。
『その“ユキちゃん”と名付けた精霊の契約者から、言伝を預かってるナリ』
「言伝ですか?」
『うむ。“いじめてごめんなさい”だそうナリ。他の三人がやってるのに、自分だけそれに便乗しないと自分がいじめられると思ったみたいナリな』
「……そうでしたか」
“彼女”は悪いことだとわかっていたけれど、他の三人がやっているから自分もやった。
そうしなければ自分を守れなかったのでしょう。
けれど、ティムファーファ様が現れて“還れる”となった時真っ先に「帰りたい」と叫んだ。
ずっと帰りたかったのですね。
そして、逆に最初に私をいじめた“彼女”は一人別の意見になった。
けれど、数は力。
“彼女”は一人になりたくなかったから、他の子たちの意見折れたのですね。
目を閉じる。
どこへ行こうと、人は弱いから……周りの意見に流されてしまう。
弱いから、自分よりも弱いものがいないと、それを踏み躙って“自分”を確認したがる。
大丈夫、私は知っています。
彼女たちは自分でそれに気づいていたし、乗り越えてくれたんですね。
「そうですか……」
なら、よかったです。
自分で気づけるなんてすごいことですし、認めて謝るなんて普通できません。
すごいです、とても。
優しくて本当にいい子ですね。
『なにより、あのままあの国にいれば自分たちが兵器として戦争に駆り出されると勘づいてたんだろうね。それなりに賢い子たちナリ』
「そうですね」
それもあると思います。
期待通りではなかった私をいじめることは、彼女たちの保身でもあったのでしょう。
そして、結果的に私は
同郷の“彼女たち”にいじめられなければ、城のエルフたちのいじめの方がひどくなっていたと思いますから。
それこそ——今生きていられないほどの。
だから、私は彼女たちに屈するわけにはいきませんでした。
彼女たちのいじめに屈してしまえば、エルフたちからのいじめがもっと、私の命に関わるレベルでひどくなっていたし、私が屈したとなれば“次の獲物”が彼女たちの中から選抜されていたでしょう。
エルフは人間を下等種族だと言い切っていました。
最悪、
異世界から人を召喚した者は死にます。
召喚とは、命と引き換えに行われるもの。
それを上手いこと言って実行させるつもりだったのでしょう。
そして、“彼女たちは”それを感じ取っていた。
だから大丈夫。
私は傷ついていないし、屈してしていないですよ。
あなたたちは元の世界に帰って、自分の幸せのために生きてほしいです。
「なるほど、リセを犠牲に保身に走った者たちを、元の世界に戻した。……リセはエルフどもが行方不明届けの出されていた『ルゼイント王国』の貴族により召喚された——異世界人」
「は、はい」
「リセ、リセは怒るなと言ったがそれは無理だ。『森人国』はいくつもの禁忌を犯している。もはや看過しようがない」
「……そ、それは……」
思ったよりも冷静に、藍子殿下がおっしゃるので、私も一瞬聞き入れそうになりましたが……それは……。
「『ルゼイント王国』側も国民一人が犠牲にされている。それも禁忌を犯すために利用されて。黙っているわけにはいかんだろう」
「そうね。それに、向こうがめちゃくちゃに挑発してきてるわ〜。うちの貴族たちも血の気が多いからぶっちぶっちなのよね〜」
あわわ。
「そして、ティムファーファ様の話を聞いて連中がなにがなんでもリセ様をほしがってる理由もわかったわ〜。せっかく苦労して召喚したその“少女たち”が帰ってしまったからなのね〜」
『ナリ!』
「!」
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