ジェンダー論

「私さ。最近ジェンダーについてよく考えるのよ。男からしてどう思う?」

 カフェオレを飲みながら、女は尋ねる。

「とうでもいい、ね」

「冷たいじゃない」

「まぁこのコーヒーよりは冷たいんじゃないかな」

 男もコーヒーを啜りつつ、興味なさげに言葉を返す。

「俺はたまたま男っていう肉の形で生まれた。君はたまたま女っていう肉の形で生まれた。俺にとってはそれだけだよ」

「じゃあもし、私がジェンダーに関することで困ってたら?」

「助けるだろうね」

「…なんで?」

「自分の手の届く範囲だから。問題そのものは俺には関係ない。助けたい人だったら助けるし、無理なことは無理だからしない。それだけ」

 女はカフェオレを一口含んだ。

「温かいのか冷たいのかわからないわ」

「…まぁ、その冷蔵庫から出したばかりの牛乳で半分以上埋まってるコーヒーカップよりは温かいんじゃないかな」

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