ブラックアウト

「ねぇ、電気消して?」

艶やかな声が宵闇に溶ける。脳が溶かされる感覚に押されながら、私はボタンに伸ばす。

 機械的な音とともに、世界は暗闇に包まれた。

「この方が、いいでしょう?ね、視覚が奪われると他の五感が鋭くなるみたいよ。つまり、ね?」

「なぁ」

「なぁに?」

 甘い。甘い砂糖の衣を私は剥がしたくなった。

「恥ずかしいだけだったりして」

「男は華を持たせるものよ、女にね」

「花は完璧じゃない方が美しいこともある」

「秘すれば花、は?」

「造花より余程魅力的だね」

「…貴方は話すのが好きね」

 苦笑を漏らす女の首に手をかけながら、私は少しだけ笑う。

「暗闇だと五感が鋭くなる…なぁ、そうだろ?」

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