第17話 ヤーシャ族の狩猟
キィ、キィ、キィと京美を取り囲む、タムトタムト。京美の様子を伺っているが、今にも飛びかかってきそうだ。
─たまに可愛らしい小型犬であるのにも関わらず 良く吠える犬が居る。
そういった臆病さからくる威嚇とは違うタムトタムトの声。
完全に京美を獲物として見ている。
背を向けたら襲いかかってくる。
それがハッキリとわかる。
槍など持った事はないが、構えずにはいられない。
槍先を動こうとするタムトタムトに向け
こちらも威嚇する。
正直、京美はへっぴり腰で”構える”
なんて大層な格好ではなく、ただ槍先をタムトタムトにむけているというのが正しいが─。
京美は槍を構えたまま、ジリジリと後ずさる。
(このまま、槍を突き出し一匹退治出来たとしても 他のタムトタムトが襲いかかってくるかもしれない)
とにかく、動けないそんな状況だった。
その時だった。
ドスッと音と共に『ビィッ』と断末魔をあげ、転がるタムトタムト。
その様子を見た仲間達が『ビィ!、ビィ!』と騒ぎ出す。
転がったタムトタムトには見覚えがあるナイフ。
砂埃を上げながら到着した白の一角は「俺の見込み違いだったみたいだな」と言った。
「だから言ったでしょ! 買った物って! あんたこの服気にしてたけどさー、フェイクだよ、フェイク!」
『ギィィイイー!!』
仲間を殺され怒ったタムトタムトが二人を目掛け襲いかかってくる。
白の一角は素早く刺さったナイフを抜き取り
身を翻す。
京美は為す術なく槍を持ってオロオロする。
『御頭!』
他のヤーシャ族も到着し、各々槍を構える。
牙を剥き出しにし襲いかかってくるタムトタムトを冷静に槍先で突き刺し引き抜く。その繰り返し。狩猟が得意とあって宛ら舞のようにも見える。
圧倒的にこちらが優勢に思われた。
しかし、倒しても倒してもその数は何故か減らない。
「こいつら…! 何かおかしいぞ! 減らねぇ!」
デカイヤーシャ族が叫んだ。
タムトタムトの牙がヤーシャ族を掠める様になってきた。狩猟が得意であっても体力には限界がある。
「一点集中で突破口を開くぞ!」
白の一角は叫んだ。
背中合わせになる様にヤーシャ族は集まった。
白の一角はヤーシャ族の壁の中に居る京美に声をかける。
「俺の正面のタムトタムトを攻撃する、そしたらお前は俺の後に続いて走れ!」
「わかった」と頷く京美。
白の一角はナイフを構え、正面のターゲットに狙いを定めた。
正に投げる瞬間─!
タムトタムト達はザワザワと総毛立って『ピィピィ』と周りを気にする仕草をした。
そして、散り散りに逃げ出し始めた。
『な、なんだ?』
『何が起きたんだ?』
静かになるとその直後
バキバキバキと木々が揺れ同時に獣臭さが漂い始めた。
フゥーフゥーと息遣いを感じ、少し奥の暗がりには赤く光る目が見えた。
「まさか…血の匂いで…」
常に感情を出さない白の一角が絞り出す様に
声に出す。
グルルル…
姿を見せた獣。
体長4メートル、巨大な爪と牙をもち、四足歩行。筋肉で引き締まる四肢、揺れる長い尻尾。
そして、京美の着ているヒョウ柄そのままの毛皮の模様。
一言で表すと巨大な【豹】がそこに現れた。
『フタツ面の森の聖獣だ!!』
ヤーシャ族達が叫んだ。
工場勤務パワハラおばさん異世界へ征く! ヒジキ @hiziki877
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