第14話 黄金の目

リーリー。

リー……。

虫の鳴き声は止まった。



ドンドンドン!!!



その音にカバッ!と飛び起きる京美、続けてアリナも目を擦りながら起きる。

隣の部屋からティムが木の棒を手に持ち、走ってやって来た。


「京美さん! アリナ!」


「何なの!? 一体?」


「何者かに家を囲まれてるみたいです!」 


京美はベッドから降り壁板の節目から外を覗いてみる。


10人は居るだろうか?

確かに人影に囲まれている。


ドンドンドン!

激しく扉を叩く音。

そして「出て来いや!!」聞き覚えのある怒声。


ティムが棒を片手に構えドアに向かう。


「待ってティム、私が行く」


これはあっちの世界でもある”お礼参り”ってやつだね。そう瞬時に理解した京美はテーブル上に置いた標本の角を頭に装着した。


「京美さん……」


「そんなに心配しないで……顔見知りの声だからさ、私が行くわ」


アリナは京美に行かせないように腕を引っ張る。

京美はアリナの頭を撫でながら「大丈夫だから」と言ってニッと笑ってみせた。


扉を開けた京美は周りを見渡した。


そこにはやはり、日中に見たヤーシャ族が居た。


京美を見ると奴は此方を指差し「この女です! 御頭!」と他のヤーシャ族よりも一周りは小さな男に報告した。


(真ん中の小さい奴が親分か……)

京美は冷静に観察する。


その直後、ガンッという音がしてデカイ例のヤーシャ族が転がった。


デカイヤーシャ族は殴られた事にビックリして「お、御頭?」と顔を上げる。


「女じゃねーか、女相手に俺に縋ったのかお前…」低く冷たい声。


「は、スミマセン! 白の一角と名乗ったので、御頭の血縁かと思ったんです……。あ! ほら女の頭を見てください! 白の一角です。」


フードを深く被った男の目は金色、鈍く光る。京美の頭上を見つめる男。


パシッ!


そして京美の角を払った。


『角が取れた!』

ザワザワするヤーシャ族達。


「バーカ、よく見ろ偽物の角だ。確かに…俺の血縁に成りすましてるふてぇ女みたいだな……?」


チラリと京美に目をやり男は続ける。

「それにお前の着てるその皮……気になるな」

ヒョウ柄のトップスを見る男。


「おい」と男は顎でヤーシャ族に指示を出す。


2体のヤーシャ族が京美の腕を掴み引っ張った。


京美は攫さらわれわれまいと抵抗するが、力で敵うはずもなく、引き摺られる。


『京美さん! キョーミ! 連れて行かないで!』棒を振りかざしたティムとアリナが家から出てくる。


ヤーシャ族はそれを片手で簡単に抑えた。


「こいつらどうします? 御頭」


「適当にその辺に縛っとけ……」


「へい」


京美は綱で縛られ、大柄のヤーシャ族の肩に担がれた。ゆさゆさとヤーシャ族の歩行に合わせて視界が揺れる。

家の方を見ると畑の柵に縛られている二人が見える。


(あそこなら、村の人達にすぐに見つけてもらえるだろう…)


京美はホッとしたと同時に、これから自分は一体どうなるのだろうと恐怖した。

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