第11話 ミャラッカ国の屋台村

外に出ると心地よい清涼感。

木洩れ日がシャワーの様に降り注いでいる。

森を切り拓いて作った村というより、

『森と共存している』

そんな言葉がピッタリの景色だった。


(今どきの子がこの場にいたらきっと映えるバエルとか言ってはしゃぐんだろうね)


昨日この村に来た時は暗くてよく見えなかったが今はよく見える。

アリナ家もそうだが周りにある家々もそれぞれ畑、井戸、納屋などがあり何時でも時給自足できそうだ。


少し先に居たアリナが京美に声をかけた。


「キョーミ、こっち」


アリナは夜見たときより一層透明感が増している。ティムの言うようにやっぱり住む世界が違うのかもね。

アリナを見て、なんとなく納得し始めた京美であった。


村を歩いていると何人かの人にすれ違う。


「アリナおはよう」


「おはよう!アリナ、ティムの様子はどう?」


「おはよー アリナ今日はいいお天気ね」


村の人達はみんな気さくでアリナの顔を見ると挨拶を交わしてくる。


ただ一つ気になる事がある。

アリナには笑顔を向ける村人達、しかし京美の姿が目に入るとサッと目を逸らす。


「じゃ、アリナ畑に戻るね」


とか


「ちょっと急いでるんだ。またね。アリナ」


とかそそくさと通り過ぎる。


……明らかに京美を避けている。

仕方ないのかな?生肉を喰らうヤーシャ族に思われてるだろうし。

村の人達はアリナとティムのように華奢で白い人種。


(みんな妖精みたいだな…こりゃ、地黒の私は目立つわ 美白って大事なんだな)


少し遠くに鬱蒼とした森が見えた。


「あれが昨日アリナと私が出会った森?」


「うん、フタツ面の森」とアリナは頷いた。


道なりに歩き続け、周りを観察する。

畑には見た事のない野菜が栽培されている。

オレンジ色をした大きなきゅうり

手のひらサイズの四角いカボチャ

真っ白でハートの形の葉のキャベツ

見るものすべてが初めてで新鮮。


日本では畑いじりに全く興味が沸かなかった京美。

”ミャラッカ国”の野菜には目が離せない!という感じで夢中で見ている。


「面白いわ、初めて見る物が一杯でさ、きっと動物とかも変な形なんだろうね」


物心が付く頃の子供ってこんな風に世界が見えているのかな?


歩き続けるとガヤガヤと市場の賑わいの音が聞こえてきた。野菜、魚、薬、衣類。色んな屋台が軒を連ねている。


「うわー、アリナ何これ?フリルが付いてるよこの魚!」


なんだか楽しい!


反応は薄いがアリナもほんのり微笑んでいて

楽しんでいるのがわかる。


ある屋台の前でアリナは立ち止まった。パンなのか?お菓子なのか?ピンクとムラサキが交互にくるくると渦を巻きカタツムリの殻のような形をしている焼き菓子のふんわり甘い香りが漂う屋台。


欲しい欲しいと駄々を捏ねたりはしないが、アリナの瞳は正直だった。


(ホントはこういうのが好きなのに、兄ちゃんの為にあの肉を買ったんだね)


殆どの屋台が狭い敷地でひしめき合うように

商いをしている中で場所を独占している屋台があった。


「あれがお肉屋さん」

アリナは指をさし言った。


屋台には大きなトカゲ肉や例のカエル肉が吊るされら、ドッジボール位の大きさの甲虫がそのまま店先に並んでいる。

屋台の周りで処理をしたのか、羽やら鱗やら血の跡やらで散らかされている。


「やっぱり一言、言ってやらなきゃダメな奴みたいね」


迷惑な奴だねぇ! どんな顔してるんだ?

一目見てやるか……と京美は真っ直ぐツカツカツカと屋台に向かった。

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