第7話 アリナとリゾット
京美は何時もより早く起きていた。
慣れないベッドの硬さで眠りは浅く
そして朝日の強い日差しが
強制的に京美の眠りを覚ました。
「〜♪〜♪」
もぞもぞとポケット中の携帯を取り出し
ボサボサの頭をポリポリ掻きながら、
IZAWAの歌声アラームをオフにする。
ついでに電波を見るとやはり圏外。
いつもと違う朝。ぼんやりと周りを見渡すと
ログハウスのような作り
壁板の節目から光の筋が差し込むような
そんな簡素な作りの家であった。
沢山の書物の入った本棚、謎の動物の化石、
角の付いた骨格標本。
見たことない世界地図などか所狭しと設置されている。
ふと隣を見る。
昨晩はお互いベッドを譲り合い
結局狭い所で一緒に寝る事になった
居るはずのアリナが居ない。
隣の部屋から漂う、なんとも言えない料理の香り。
「ヤバい!あの子料理作ってる!」
京美は愕然として思わず叫んだ。
昨日あの後、アリナがご馳走してくれた手料理
それは京美に強烈なトラウマを植え付けた。
根野菜らしき物は乱雑に皮付きでカット。
生煮えのうえに食欲を減退させる青い色の豆。
それだけならまだいいが極めつけは
肉代わりなのか?カエルに似た変な奴が頭付きで入っていた。謎のごった煮。
空腹の京美の為に作った晩ごはん、
兄のお礼も兼ねて…
アリナの真っ直ぐ見つめてくる瞳
スプーンを持つ手が震えてる。
残すわけにはいかなかった……
思い出すだけで悪夢。
京美は普段料理は全然しない。
スーパーの半額惣菜レギュラーだが
弁当工場で働いているので、舌は肥えてる。
「阻止しないと……」
バッと立ち上がるとアリナのいる部屋に急いだ。
しかし既に料理は皿に盛られていた。
「アアアアアァー!! 」
見た途端、突っ伏して絶叫してしまう京美。
声に気づいたアリナは振り向いた。
「?」
「アーァ、アリナ…おはよう」
「キョーミ、おはよう」
京美はサッと椅子に座り覚悟を決めた。
チラッと薄目で料理を見てみる。
テーブルにはリゾット?らしき物が禍々しいオーラを発しながら皿の上に鎮座している。
そして昨日のカエルみたいな奴の頭がリゾットの真ん中からこちらを覗くように盛りつけられていた。
(ひっ…!)
チラリとアリナを盗み見すると
せっせと兄ちゃん用の料理を盛り付けていた。
カエルみたいな奴の頭を真ん中に来るように入念に調整している。
兄ちゃんせっかく命を救ったのに……
無事でいてくれ。
テーブルに肘を付き、スプーンをくるくると指先で遊ばせながら京美は祈った。
準備を終えるとアリナは
トトト……とお皿とスプーンを持って兄のいる部屋に向かっていった。
暫くすると、『ウワー!』という男の悲鳴が聞こえてきた。
「お? 起きたみたいだね、どれどれ顔見せに行くか。」
立ち上がり兄のいる部屋に向かう。
京美の皿にはカエルみたいな奴の頭だけが残されていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます