第20話カエル:カエルの記憶
目の前にはカエルが見える。
カエルがいるのはどこだろうか?
河川敷ではなかった。
そこは学校だった。校門には中学校の名前が書いてあったが。覚えられなかった。少なくとも、わたしの通った学校ではなかった。
カエルは普通の人間には見えないことをいいことに、宙に浮いていた。そして、キョロキョロとしていた。何かを探しているふうだった。
校舎に入っていくと、ある教室の前で止まった。どうやら、目的のものを発見したらしかった。その教室の中は騒がしかった。
中から聞こえてくる内容は、宙に浮くこと、飛ぶこと、それを知らないということだった。挙句の果てには、内容のない言い合いと殴る音がした。机などが散らかる音といろいろな人の声、やめなよ、いいぞやれやれ、といういろいろな声が聞こえた。中ではてんやわんやになっているようだ。
それを窓から眺めるカエルは表情を引きつっていた。ワナワナと震えていた。何かを考えているようだった。
カエルは帰る。
すると、河川敷にあの男が現れた。教室で喧嘩をしていた男だ。男はカエルを探しているようだった。
しかし、男はカエルを見つけることができなかった。カエルは見つからないように隠れていた。その顔は引きつっていた。
男は帰る。
カエルは1人で川を眺めていた。何かを考えているようだった。何を考えているのだろうか?
翌日もカエルは学校に行った。そこには一人ぼっちで空を眺めている男がいた。男は何かを考えているようだった。
カエルは帰る。
その日も河川敷に男は来た。男は一人ぼっちで川を眺めていた。何を考えているのだろうか?
男は帰る。
カエルは男と同じように川を眺めていた。それから、学校の男と同じように空を眺めていた。何を考えているのだろうか?
その次の日も、そのまた次の日も、同じことが繰り返された。それはカエルと男との両方にとって、無駄な時間のようだった。しかし、そんな日々が続いた。
ある雨の日、男が河川敷を去ったあとにカエルはいつものように眺めていた。その焦点は川なのか空なのかは確かではなかった。その目には雨が溜まっていた。
――カエルは違う場所に行った。
その場所は学校ではなく、森林や街中や海岸だった。
森林に行けば、様々な捕食者に命を狙われた。
街中に行けば、たまに通る妖力を持つものに退治されそうになった。
海岸に行けば、干からびた。
カエルはいろいろなところに行った。いろいろな妖怪にあった。いろいろなことを聞いた。しかし、彼は目的を達成することができなかった。
男の呪いを解く手段はわからなかった。
カエルはショボショボと帰る。
カエルはショボショボ学校に行く。男は高校に進んでいた。しかし、学校での立場は変わっていなかった。
男は相変わらず1人ぼっちだった。男は窓の外を見ていた。
と、窓から落ちた。カエルは驚いた。どういうこと?
浮く能力は使っていない。自分の力で?
自殺?
カエルは男を助けようとした。せめてもの罪滅ぼし。落下を止めよう。
男のカラダはゆるりと浮いた。それは、自殺を止めるには十分だった。男はそのままゆっくりと下にいるものに抱き抱えられて落ち着いた。カエルの気持ちも落ち着いた。
男は1人ぼっちではないと思ったからだ。それは、直感だった。この女性の人間とならうまくやっていけるだろうと感じた。理由はわからない。しかし、2人の姿は絵になった。だから、カエルはほっとしたらしい。
しかし、そのカエルの安心は直ぐになくなった。その女性からただならぬものを感じた。ひどくビクビクした。そそくさと帰った。
そして、河川敷。
そこにただならぬ気配が近づいた。さっきのやつだとみがまえた。
やらねばやられる。
そして、近づいた。
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