あいあふときも――捨聖の妻  🍃

上月くるを

第1話 プロローグ





 霜枯れの河原に、くちばしの長い鳥が一羽、黙然とたたずんでおります。

 灰色の鳥は虚空の一点を見つめたまま、じっと身じろぎもいたしません。

 堅そうな羽を自在に寒風にねぶらせつつ、凝然と立ち尽くしております。


 冠雪の浅間山。

 涸れた千曲川。


 丸い小石、折れた枯れ葦、干からびた魚、中空の残月。

 ひとり。ひとり。ひとり。ひとり。……………………

 ここにあるものは、みんな、ひとりなのでございます。

 

 何処へ? 

 何のために?


 そう問われても、わたくしは答える術を知りません。

 ひたすら、歩みつづけねばならないのでございます。

 生きてこの世にある限り、ひたすらに、ひたひたと。

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