本題
食事の最中、誰も何も話さなかった。
マルヴォロがキャメルに挨拶をしたきり、
食器の音だけがカチャカチャと鳴る。
本題についても、煙合についても、誰も声は出さなかった。
食事が終わり、コルペッソを飲んでいると、唐突にメビウスが話し始めた。
「さて、本題について話そうか」
やっとか、という心情が皆顔に現れる。
「僕やプリヴェルに届いたように、君たちにもケントからの招待状が届いただろう。
届いていなければ申し訳ない、故意でないことを願おう。
私はいつものように集会には参加しなかった。
すると招待状が来てから五日後の夜、プリヴェルがこの屋敷に来た。
今回の集会での要件について私に話してくれた。
すべて、というわけではないが。
アリアとマルヴォロが知っている範囲だよ。
ウィンストンとキャメルにも話したね、
今回は彼―――ケントが何を考えているのか君たちの意見を聞きたかった」
そんなことか。手紙で良かったんじゃないか。
アリアが話し始める。
「私はどの組織にも属さないわ。あなたがこのメンバーを集めて何を企んでいるのかは知らないけどね」
「アリアらしいなぁ。何も企んじゃいないよ」
すると、ウィンストンがこう続ける。
「僕は拒絶するつもりはないです。
でも計画を話してくれないなら、入る気はないかなぁ」
「なるほど、ありがとう」
俺の番か。
「俺は明確な目標も信頼もない組織に身を置くことができないだけだ。
計画も知らせずに組織には入れ、なんて虫が良すぎる」
「たしかに、君はいい当主だね。キャメルは?」
「…僕は、ケントさんにずっとあこがれてきましたから、招待状は届かなかったけれど、ブリガロ便の不手際だといいですけど」
「きっとそうだよ、それじゃあ君は煙合に入る気かい?」
「ええ、まあ、」
「OK、わかった。
それじゃあみんな今日はここまでだ。
もう遅い時間だし一泊して帰ってはどうだい?」
キャメルとアリア以外の皆がそうするようだ。
キャメルはケントのもとに出発するのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます