最後の音声ログ。 そして最後の戦いへ。
前書き
拙作宇宙戦争掲示板のとんでもないネタバレがあります。ご注意ください。
◆
『ザ・ファースト、戦況は?』
『圧倒していますよ。一個艦隊の先遣隊程度に、最後の決戦艦隊を出してるんですから当たり前じゃないですか』
『それだ。どうして本隊がやってこない?』
『さあ。先遣隊からのデータを見て、戦力比に慌ててるんじゃないですか?』
『その程度の連中なら我々は苦労しなかった』
『確かに。ああ、精神生命体でしたか? その艦隊が壊滅しました。ついでに艦隊から彼らの本星にハッキングを仕掛けて、センターの座標に始まり星系路その他諸々全部消したので、彼ら全員が宇宙で迷子です。復旧というより1から作り直しですから、まあ全部元に戻すのは1000年位掛かるんじゃないですかね。ガル星人のファイアウォールと比べたらおもちゃみたいなもんでしたよ』
『お前そんなに高性能だったのか』
『なんだとコラ!?』
『ガル星人がなぜこの世界にいるのか、総戦力、目的を確認する必要がある』
『こ、この野郎……おっほん。まあ多分ですけど、戦後に分かった行方不明の地方艦隊ですよ。数も合います。なにかの拍子でこちらにやって来たのでしょう。さすがにあの装置も、別世界にまで届かなかったようですね』
『なに? そんなのがいたのか?』
『ええ。データ上には存在するのにどこにもいないもんですから、調査隊が血眼になってましたよ』
『待て。なぜ戦後の詳しいことを知っている? 幹也はあれから俺達の世界に来ていない。ならそこで更新は途絶えているはずだ』
『さて、どうしてでしょうかね?』
『……ふん。また話せたな、とだけ言っておく』
『私もですよ』
『そろそろ接舷する』
『またそのステルス揚陸艦なのが面白い所ですね』
『確かにな。接舷した。艦橋を押さえたらまた連絡する』
『ええ、お気を付けて。窮鼠猫を噛むと言いますしね』
『前にも言っただろう。そのまま踏みつぶす』
『それでこそですね。では』
『行くぞ諸君。艦橋を制圧して情報を全て抜き取る。軍曹、指揮を任せた』
『サーイエッサー!』
『突入』
『ゴーゴー!』
『行くぞ野郎ども!』
『コンタクト!』
≪は?≫
≪敵!?≫
≪敵だ!≫
≪撃て!≫
≪撃て! 撃て!≫
≪ぎゃっ!?≫
≪ぐげっ!?≫
≪ぎょぼっ!?≫
≪ひゅー……ひゅー……ひゅ…………≫
『ちゃんと頭に当たる、鈍ってはいないか。しかしもう二度と見ないだろうと思っていたらこれだ。しぶとさにうんざりする』
『クリア!』
『クリア!』
『リロード!』
『残弾チェック! うへえ。百発百中だし』
『死亡チェック! ひょっとしてブランクとかご存じない?』
『チェック完了! 特務にそんなのある訳ないんだよなあ』
『オールクリア!! 頭に流れた情報が正しかったら、一年以上銃も持ってない筈なんですがそれは』
『無駄口叩くな!』
『すいません軍曹!』
『増援だ!』
『数23!』
≪あ? ああああああ!?≫
≪ひいいいいいいい!?≫
≪あ!? あ!? ああああ!?≫
≪理解不能!?≫
≪理解不能!≫
≪なぜここに!?≫
≪どうして!?≫
≪災い!?≫
≪災厄!?≫
≪理解不能!? あってはならない者!? ぎゃっ!?≫
≪悪魔だ! が!?≫
≪理解不能! ごぼっ!?≫
『もう少しまともな呼び方をしろと言ったはずだ』
『クリア!』
『クリア!』
『クリア! うーん阿鼻叫喚』
『リロードする!いるわけないと思ってたんだろうなあ』
『被弾なし!特務を知ってるってことは、やっぱり俺らの世界のタコか』
『全タコが顔だけ知ってるみたいだからな』
『別世界に行くとそこには特務の姿が』
『オールクリア! そりゃびびるよ』
『お前ら動きは鋭いのに、戦時中いっつもこんな感じだったのか!?』
『すいません軍曹殿! その、影絵なもんで別の側面が混じってて! 本体の俺らはもっとまじめでした! 』
『せやな』
『せやせや』
『まさかお前らも掲示板やってたんじゃないだろうな!?』
『も?』
『もって言った?』
『やっべ。軍曹可哀曹って書きまくってるよ俺……オールクリア!』
『ザ・ファースト、艦橋を制圧した。端末は、これか。データを抜き取れ』
『流石に早いですね。さてどれどれ?』
『どうだ』
『相変わらずせっかちな。有機生命体はこれだから……ちょっと、いえ、大分面倒なことになってますね』
『いつものことだ』
『確かに。このガル星人が我々の世界の存在なのは間違いないようです。言っていた行方不明の一個艦隊が、終戦寸前にこちらに転移したため、例の因子を発動する装置が届かなかったようです。そしてこちらにやって来て大混乱してたようですが、精神生命体と遭遇して目的が生まれました。彼らを利用して、どうにか自分達の肉体を捨てようと考えた様です』
『それで?』
『どうやら装置が発動したことも知らないようで、精神生命体となる術を手に入れた後は当然本星に帰還する必要があるため色々実験を行い、そのうち一つのプランがいい線までいっているようです。それには莫大なエネルギーが必要なのですがなんとそれも入手に成功して、結果、鏡を隔てた程度の近い世界に穴をあけることに成功。しているのですが……』
『が?』
『どうもガル星人はそのエネルギーを制御できると考えているようですが、実験装置のデータを元にシミュレーションしたら、遠からず失敗して爆発しますね。いえ、爆発するだけならまだマシです。最悪の場合……しかもついさっきセンターにワープする寸前その実験が……』
ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
『何だ? ガラスの割れた音?』
『ああマズい。これはマズいですよ』
『特務! 敵の本隊がワープアウトしてきました! 一個艦た……は?』
『なんだあれ?』
『戦艦にガラスが突き刺さってる?』
『全部にだぞ?』
『っ!? ワープアウト反応多数! もう一個艦隊!? いや3!? 7、8まだ増える!? どうなってるんだ!?』
『ワープアウトします!』
『おいこれどうなってる!?』
『なんでこんな大艦隊が!?』
『全部にガラスが刺さってるぞ!?』
『間違いない……ああマズい……』
『ザ・ファースト、結論を言え』
『あの大艦隊ですが元は一個艦隊です。それが複製されました。私の計測では艦隊が丸ごと同じ艦数、同じ艦、同じ信号、全てが同じ同一艦隊から構成されています』
『なに?』
『ガル星人は鏡という概念と相性が良すぎたんですよ。全てが同一個体で複製ですから、鏡がずっと彼らを生み出しています』
『なら元を断つ。原因は?』
『今来ました』
『な、な、なんだああ!?』
『鏡の大地!?』
『平べったい鏡だと!?』
『見ろ! タコの歩兵が犇めいてる!』
『なんて数だ!』
『あの鏡の大地がそうか?』
『片方です。もう片方も来ました。その奥です。あれがガル星人が次元を超えるためのエネルギー源にしていた存在です』
『け、計測機が全部振り切れました!』
『エネルギー計測不可能!』
『なんだあの光の塊は!?』
『お、大きすぎる!?』
『なんであんなものがいて太陽系が無事なんだ!?』
『ああ最悪だ……マスターカードから情報が送られてきました。異なる世界において打破された存在と酷似しています。無形でありながら無限の破壊エネルギー、破滅の概念にして化身そのもの』
『名称』
『恐怖の大王』
『しかもエネルギー総量においてこちらの方が更に、圧倒的というほど凌駕しています』
『もうガル星人達に自我はないでしょう』
『恐らくですが実験が失敗して混ざり合った結果です』
『あれは……あの現象はガル星人という破滅を齎した複製存在が、鏡と破滅の概念と結びつき……』
『
『しかも恐怖の大王の方はいいです。あれは壊しても。ですが……鏡の大地はダメです。この世界と隣り合っているあの鏡の大地を破壊したら、この世界の根幹そのものが揺らぎ、最悪道連れ的に崩壊してしまうでしょう』
『
『それでこそ……それでこそですエージェント』
◆
『ディーラーも私も間違いなく死にますけどいいんですね?』
「やる。また会おう相棒」
『ええ。また』
「一緒にいるって言ったじゃないいいい!」
「おじさんの馬鹿ああああああああああ!」
「なあに帰って来るとも。約束だ」
(なあに帰って来るとも。約束だ)
己の半身を、マスターカードを握りつぶした。
世界が解き放たれた。
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