音声ログ
事件当時現場にいた里崎巡査(仮名)の証言
『最初にハイジャックが起きたって聞いたときはそりゃあ驚きましたよ。日本で船のハイジャックなんてもうここ数十年起きてないでしょ? それが世界的な豪華客船なら尚更ですよ。でも上司が防弾チョッキを着て銃の点検を忘れるなよって言った時に、ようやく理解出来ました。大事だって』
『署からパトカーに乗って現場に着いても驚きました。もう報道ヘリが空を飛んでるじゃないですか。後から聞いたら犯行グループがテレビ局に伝えたみたいで、やっぱりあれは交渉を有利に運ぶための演出だったんでしょうね。警察のとも合わせて煩かったのを覚えてます。しかも退去させようとテレビ局に連絡したら、報道ヘリで写さなかったら人質を殺すとまで言われてたみたいですから、犯人達の念の入れようですわ』
『警察側の現場の様子ですか? そりゃもう犯行グループを刺激しない様に小声でしたけど、人間あれだけ小声でも怒声を出せるもんだなって思いましたよ。修羅場ですよ修羅場。人質の皆さんは甲板に並ばされて、犯人達は自動小銃で武装してるんです。どう考えたって現場にすぐ行ける様な末端の警察の手に余りますよ。こりゃもう特殊部隊の手に委ねるしかないだろってのが素直な意見でした。しかも船への渡しも無いんです。ヘリからの降下しかないじゃんって思いましたね』
『ええ、要求にも驚きました。玉手箱ってアンタ……こいつらこんな大掛かりなことしておいて馬鹿なのか?って思いましたよ。その頃には大雑把に人質の身元が分かってましたから、身代金の暗喩か?ってみんな思ってました』
『それから段々と機動隊やら警察の特殊部隊が到着し始めた頃ですかね。多分犯行グループのリーダーだと思うんですけど、船外アナウンスで、自分達の本気を見せるためにとりあえず誰かに死んで貰おうって言い始めたんですよ。驚きましたね。現場は身代金の要求で意見が一致してたんですから。それがいきなり人質を殺すって言い始めたんです。本気か?って思いましたよ。そんな事を思ってると人質、2人、いや3人だったかな? 彼等の頭に銃口が付きつけられたんです。これはマズいって思った時に起こりました』
『え? 何がって? 船の電気がいきなりフッて消えたんです。しかも驚いた事に街処か何故かパトカーのライトにヘリのライトまでです。一体どうしてこんなことが急に起こったんだって思いましたけど、あ! 突入があったんだっ! て思いました。でも不思議ですよね。誰も乗ってないパトカーのライトも消えたんですから、まるでお化けか機械の神様が乗り移って消したんじゃないかと思いましたよ』
『おっと話がそれました。突入だって思った直後に発砲音がしたんでやっぱり! って思いました。現場に知らされていない極秘の作戦だったんでしょう。いやはや、人質は全員無事で犯行グループだけが制圧されたって、いったいどんな凄腕隊員達だったんでしょうね』
◆
人質にされていた柿崎氏(仮名)へのインタビュー
『ええ、お陰様で傷一つありません。いや当然私達全員が震えていました。中には幼い子供もいましたからね。よく泣きださなかったものだと思いました』
『甲板に並ばされた時もです。ヘリからのライトが眩しかったのをよく覚えています。ええ、よく見えるように一列に。実際犯人達にしてみれば、我々はショーウインドーに並んでいる目玉商品だったのでしょう』
『ああご配慮ありがとうございます。確かに色々立て込んでおりまして。ではその時の事だけをお話ししますね』
『明かりが消えた時に思ったのは、突入が早すぎる! でした。確かにあの時私は銃口を突きつけられてましたが、まだまだ脅しの段階で本当に殺されるなんて思ってませんでした。ひょっとしたらそう思い込みたかっただけかもしれませんが……』
『そうやって頭の中で考えていると状況は一瞬で変わりました。急に辺り一面真っ暗になったと同時に、私達に銃口を向けていた犯人達が急に倒れたんです。ええ、1人1人順番にではありません。その場にいた犯人全員がほとんど同時にです。ええ見ました見ました。真っ暗な中、ほんの少しだけ雲から漏れてる月の光のお陰で見えたんです』
『配慮してもらったのに長引かせるのはあれなんですけど、どうしても言いたいことがあってですね。日本刀はお好きですか? ははは、祖父がコレクションしているのを幼い時に見たのがきっかけで私も嵌まりましてね。こう、徹底的に突き詰めた機能美はこうまで美しいんだって思ったもんです。それとおんなじことを思ったんですよ。ほんのちょっとだけ月明りで見えたその人たちはですね、日本刀とおんなじ光の反射だったんです。ええ、ええ。よく分かりますよ。何を言ってるんだってことは。でも私は思ったんですよ。ただ戦うって事を突き詰めた人はあんなにも美しいんだって。まさに、まさに完璧でした』
◆
犯行グループリーダー 氏名不詳の供述
『酷くない日本の皆さんよお? あんな隠し玉持ってるんだったら最初に言って頂戴よ。あんなガチもガチな連中が居るって知ってたら、最初からこんなお仕事受けないっつうの。そしたら皆さん面倒なお仕事しなくてハッピー。俺は捕まらなくてハッピー。ね? みんなハッピーだったでしょ?』
『え? ああ、お宅らお巡りさんだからよく分からないか。そりゃあいろんな所の後ろ暗い部隊を見てきた俺に言わせて貰うと、マジでヤバ連中だったね。ドン引きだよドン引き。アメちゃんの最精鋭より段違いでヤバいとか本当にヤバいから。昔グリーンベレーが歩兵200人分とか言われたけど、ありゃあそれを200人分だね。それが部隊で動いてんのよ? しかも完璧のペキに』
『ありゃ未来からやって来たサイボーグって言ってくれない? 同じ純粋な人間として比べて欲しくないんだけど。そうそうそう、全員純粋な人間の動きであれなんだよなあ。ちょっと特殊な人達対策してたら純粋な人間のガチにボロ負けしたとか笑えて来るんだけど』
『数? 10人だよ10人。これでもプロだからさ、数くらいは流石に分かるよ。いやごめんアマチュアだったわ。もう恥ずかしくてプロって名乗れないのよね。あれがプロだわ。マジでガチのプロ。まさか今さら井の中の蛙? って思わされるとはねえ。ちゃんとこの事みんなに言ってよ? じゃないと俺の仇名、馬鹿アホ間抜け瞬殺になっちゃうからさ』
『あ、ごめんちょっと嘘ついた。いや、嘘っていうか最初っから別扱いだったわ。それか俺の脳が無意識に忘れようとしてる』
『もう1人いた。うん全部で11人。ほんのちょっとだけ見えた。うん、11人なんだけど』
『ありゃ人間だけど人間じゃない。いちゃいけないもんだ。絶対に』
なななななぞぞぞぞぞぞののののののおおおおおおおおんんんんんんせせせせせせせいいいいいいいいロロロロロロロロログ
『ええ、マジモンが居るって聞いてないんですけどお』
『しゃあないこうなったら船をボカンと木っ端にしてやるか。スイッチうっ……………………』
『これで全員ですね。おや、多少強化されているようですね。勿論彼らほどではありませんが』
『彼等と一緒にするな。強化の度合いの話じゃない。こいつには覚悟が、信念が無いのだ。足元にも及ばん』
『それもそうですね。彼には?』
『もう覚悟も信念も見た。言葉も送った。それに影絵なのだ。なら後はただ消え去るだけだ』
『やれやれ、厳しいのか優しいのか分かりませんね』
『ふん。全員作戦終了。帰還せよ』
『『『『『『『『『『サーイエッサー!!!!』』』』』』』』』』
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