第6話 捜んこ索
翌日、運子は学校を休んでずっと寝込んでいた。心が疲れて何もする気がなくなっていた。
パモラが心配して運子の様子を見に来た。
「大丈夫か、ダヴァルダーク」
運子はパモラを無視して、何も答えない。パモラが頭上を飛び回る。
「明日で魔法少女お試し期間終わるけど、どうする?」
「……もう、やめる」
「そうか……じゃあ、明日また来る」
パモラが部屋を出ていった。運子は、あの妖精はいつもどこから家に侵入してるのだろうと気になったが、どうでもいいやとすぐに捨て置いた。
晩になると、運子は気分の重さを感じながらベッドを出て変身した。これがみんなに謝る最後のチャンスだ。今度はしっかり謝罪して、魔法少女も引退しよう。運子はベッドを出ると、両頬を叩いて気合を入れた。
屋敷を訪ねると、真っ先にシャンティーヌが運子を突き倒してきた。彼女は昨日よりも更に怒っている。
「よく、のこのこと現れやがったな、このあばずれ!」
シャンティーヌは運子の胸ぐらを掴んで唾を飛ばしながら怒鳴った。
「待って、私は謝り……」
「澄花をどこへやった?」
シャンティーヌに問われた運子は困惑した。一体何の話だろうか。
「澄花をどこにやったか聞いてるんだよ」
「澄花さんが……どうしたの?」
「とぼけるな!」
胸ぐらを掴まれたまま頭を床に叩きつけられ、衝動で口や鼻から茶色い液体が噴き出た。シャンティーヌの顔にそれがかかる。
「ぐっ、こいつ……!」
「ちがう、今のはわざとじゃないの……」
頭にじんわり痛みが響いて、後頭部を手で抑えた。
「ほんとあんたの魔法って不気味だよな、臭いが無いだけマシだけどよ」
シャンティーヌは他の魔法少女からフェイスタオルを渡されて顔を必死に拭いた。しかし、拭き取れるどころか汚れは伸びていく。
「ほんと、ムカつく魔法だ!」とシャンティーヌはタオルを床に叩きつけた。
ミイラの魔法少女がシャンティーヌの前に進み出た。
「草井さん、昨日は驚かせてごめんなさいね。これが私、西園寺京子の魔法少女衣装だから。澄花さんのことは本当にご存知でないの?」
「は、はい、何のことなのかさっぱり……」
「そうですか……実は、澄花さんが行方不明なんですよ」
「あんたが澄花をどっかにやったんだろ、澄花を嫌ってるのはあんたしかいねえからな!」
京子が攻撃的な態度のシャンティーヌのこめかみにピストルを当てると、シャンティーヌは「……わかったよ」と言って一歩下がり、口を閉じた。
「澄花さんが行方不明……?」
「ええ、一昨日からLINEにも既読がつかないんですよ。いつもメッセージを送ったら五秒以内に返信をするマメな方なのに」
「自宅にはいないんですか?」
「澄花さんの家は誰にもわからないんです。あのパモラでさえ。パモラはそのうち戻ってくるだろと楽観してましたけど……」
澄花の失踪は自分が酷い態度で接してしまったのが原因か? と運子は思った。
「澄花はあんたへの謝罪が通じなかった時、死にたいって漏らしてたよ。最悪の事態も考えられるな」
「シャンティーヌ、そんな言い方はあんまりですよ」
再び京子がシャンティーヌを制止した。
運子は心に重い物がのしかかるのを感じた。自分のせいだ。自分のせいで澄花は……。
「草井さんも、澄花さんの捜索を手伝ってくださいますか?」
運子は頷いた。もし澄花が死んでいたらと思うと涙が自然とこぼれてきた。
「おい、容疑者も捜索に参加させるってどういう……」
文句をつけてきたシャンティーヌは京子にピストルを空撃ちされてその場に失神した。京子は魔法のピストルを用いた魔法を操るらしい。
「では、皆さん。なんとしても澄花さんを見つけ出しましょう。発見したら私にご一報ください」
京子が手を打つと、魔法少女たちは続々と屋敷を出て澄花の捜索にあたった。
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