鈍感系主人公の無自覚な直接攻撃に対するヒロインの悩み

叶は大きく息を吐いた。

先ほどまで颯が触っていた耳が、いまだに熱く脈打っているような気がする。


小さいころから耳を触られるのに弱かった。最初は擽ったいという理由だったのだが、颯が揶揄って触るようになるにつれて、好きな人に触られる場所ということで弱点になってしまった。


私の首筋を指先で優しく撫でていたときの、彼の寂し気な表情を思い出す。それだけでも心臓がばくばくと大きな音を立てるのが分かった。


(あんなにされたらまともに話せないじゃん……)


颯の前ではなるべく自分の隠さないように行動しているというのに、ことごとく颯は叶のことを変な気分にさせてくる。


もう二度と戻れないような深い深い恋の落とし穴に引きずり込まれていくのが分かる。それがどうしようもなく嬉しい私も大概たいがいだと思うし、もういっそのこと彼なしでは生きていけなくなりたい。


思わず彼の優しげな瞳を思い出して頬が熱くなるのを感じた。


頬の熱が収まるのを待っている間にも、あれやこれやと妄想が止まらなくてさらに羞恥心に襲われる。


一度深呼吸して、颯のほうへ走り出そうとし──………


悩みごとの間にいつの間にか意識から抜け落ちていた本来の目的を思い出して、親たちがいるテントの方へ走り出した。


「転ぶぞ、走るなー」と注意をしてきそうだなと、颯の表情がありありと浮かんできて思わず笑みを浮かべた。


風が頬を撫でた。


恋する少女は走る。遠くに。





───

超絶短いです………。

これ以上書くと、無駄に感じてしまって……。

すいません。

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